Monthly Red Journeyは、毎月発刊のトピックレターです。
これまでのレッドジャーニーの発信の中から、特定のテーマに基づいてトピックを集め、紹介します。
今回のテーマは「レッドジャーニーの知恵袋」です。
1年前となる2022年12月1日~25日の期間中、レッドジャーニーのメンバーが毎日リレー形式でコラムを綴った「Red Journey Advent Calendar 2022」。アジャイル、組織変革、プロダクトづくり、コミュニケーションをテーマに、各々が活動を通して得た経験や気づき、学びなどをお伝えしました。
今回は、その概要をご紹介します。アジャイルコーチ陣による「知恵袋」が、皆様の日々の取り組みのお役に立てば幸いです。
目次
効果的な会議の進め方
「特定の議題について、関係者が集まり、意見交換や相談をして、何らかの意思決定をする」という機会が、日常の仕事においてどれくらいあるでしょうか?
会議、ミーティングなど名称は様々だと思いますが、累計するとかなりの時間をそこに費やしているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「会議」をより効果的な場とするには、どのような工夫ができるでしょうか?
レッドジャーニーのメンバーたちは、アジャイルコーチとして組織と関わる中で多くの「会議」に参加しています。
その中で実践している工夫について、中村が紹介しています。
取り組んでみた3つのこと
効果的な会議のために取り組んでいる3つのこと | サウスポーなエンジニアの独り言 (yohhatu.com)
- 時間を枠いっぱいに設定しない
- その場でタスクを終わらせる
- 場のふりかえりをする
1つ目は、1時間の枠を設けている場合、1時間すべてを使うのではなく45分~50分で終わるように設定するという工夫です。アジェンダなどの設計もその時間に合わせます。
【効果】
●次の予定に向けた準備時間として自分の気持ちや頭をリセットできる
●座りっぱなしではなく立ち上がってストレッチや休憩を取ることでリフレッシュできる
2つ目は、その場で出たちょっとしたタスクをその場で片付けるようにするという工夫です。
例えば、予定をスケジュールに組み込んだり、ToDoとして出たタスクを関係者に割り振ったりといったちょっとしたタスクを、会議中に終わらせてしまいます。
【効果】
●安心して次の予定に向かえるようになる
●その場にいるみんなで作業や確認を行うことで、認識のズレが起きにくくなる
3つ目は、最後の5分ほどで「場のふりかえり」をするという工夫です。
「ゴールにたどり着くことはできたか?」「そのゴールは自分たちにとって満足か?」「自分は充分に場に貢献できたか?」「よりうまくできるとすれば、どんな風にすれば良いか?」といった観点で、その日の会議について話し合います。
【効果】
●以降の場のカイゼンに役立つ
●お互いの感じたことを知ることができる
●チェックアウトのような切り替えのポイントを作れる
リモートワークの普及とともにオンライン会議の割合が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
オンライン会議では特に次の予定との間隔が短くなりがちです。
気持ちをうまく切り替えて、1つ1つの会議を効果的なものにするために、3つの工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。
▶レッドジャーニー知恵袋①コミュニケーション編の記事の全文はこちらからご覧ください。
身近なものに「名前をつける」効果
何気ない雑談の中で「名前をつける効果」についての会話が生まれたという濱口は、「心理的オーナーシップ」について紹介しています。
「チームメンバーをニックネームで呼ぶことでコミュニケーションを活性化したい」という話題から、その効果について「チームワークが良くなること」が最大のメリットだという結論に辿りついたと言います。
また、うまくいっているチームを見ると、ニックネームの決め方にも特徴があるようです。
それぞれのメンバーのニックネームは、自分で”呼んで欲しい名前”を決めるのではなく、他のメンバーが「こんなニックネームはどう?」という候補を出して、その中から自分が選ぶ、という決め方です。
つまり、チームメンバーが相互にニックネームをつけているということです。自分たちで決めた呼び名だから呼びやすいし、愛着が湧き、呼ぶたびにそのことを思い出すことで、よりつながりが強くなり、一体感を得られるのではないでしょうか。
身近なものに「名前をつける」効果|ともやん (note.com)
他にも、身のまわりの物事に自分たち自身で名前をつけることで様々な良い効果が生まれます。
チームやプロダクトに名前をつけることで、自分たち自身や作っているものに対する愛着がわきます。
チームで起きた出来事に名前をつけると、共通言語ができてコミュニケーションがスムーズになりますし、失敗案であれば解決策とセットで注意喚起のフックになります。
身近で、簡単にできる、「名前をつける」ということで、心理的オーナーシップを高めることができそうです。
身近なものに「名前をつける」効果|ともやん (note.com)
心理的オーナーシップが高まれば、生産性やモチベーションが上がり、よりよい仕事ができるのではないでしょうか。
ぜひ、みなさんも試してみてください。
チームでの取り組みを活性化させるためのフレームワークやアイデアはたくさんあります。
この記事も参考にしていただきつつ、自組織にフィットしそうなものを試してみてはいかがでしょうか。
▶レッドジャーニー知恵袋②チーム運営編の記事の全文はこちらからご覧ください。
100日後に死ぬスクラムマスター
スクラムマスターは、スクラムチームにおいて全体を見ながらマネジメントを行う役割を担っています。
自律した組織として主体的に動けることを目指すスクラムチームにとって、全体の方向性を見ながら的確な支援を行うスクラムマスターの存在は非常に重要です。
一方、支援として何をどれくらい行うのかについては匙加減が難しいところでもあります。
森實は、あるスクラムマスターから相談を受けたことをきっかけに、スクラムマスターの存在意義について考察したことを紹介しています。
その時のスクラムマスターの方の悩みは、大きくわけて以下の2つでした。
- 「スクラムマスター」に対する期待値を、チームメンバーそれぞれに認識してもらう方法がわからない
- 「スクラムマスター」の役割を移譲していくタイミングを見つけるのが難しい
たぶん、現場をいろいろ見られたり、実際にやられている方々にはあぁ、あるあるだよねーって感じかもしれません。
結局、期待値をコントロールするにせよ、役割を移譲するにせよ、外発的動機づけで行われたものは、同じく外発的なもので失われていく(例えば時間とか、忙しさとかもそうかもしれない)わけです。
つまり、内発的なもの、あるいは追い込まれたシチュエーションによって、初めて人は自分ごととして捉え、主体的に考え、動けるようになるといえるのです。
100日後に死ぬスクラムマスター – 侍れっどの明日できることは明日やれ (samuraikatamaris.red)
チームの活動の主体は、スクラムマスターではなくメンバーであるはずです。
もし、チームが本当の意味で自走できるようになったなら、スクラムマスターの仕事はいずれ必要なくなっていくのかもしれません。
スクラムマスターというロールがスクラムというフレームワークの中に存在する以上、スクラムマスターは永続的に必要だ、という認識を持たれがちです。
しかし、先の話の通り、「いずれ必要ないお仕事になっていく」ことができるものだ、という前提をおいたとしたら、もしかしたらスクラムマスターへの周りの理解や認識、行動が変わるかも知れません。
つまり、100日後にスクラムマスター(というロール)は死ぬんだと期限をつけたロールにするのはどうでしょう。
100日後にスクラムマスターが死ぬ。
つまり、僕らはスクラムマスターが死ぬまでに、スクラムマスターがどんなことを考え、どんなことを実行し、どんなことを結果として残しているのかを理解、体得する。
そして、それを100日後もチームに宿し、自分たちはその先も生きていくんだ、とするとしたら。
そうすることで、チームにとってのスクラムマスターへの依存や期待値というものは大きく見直せる気がしませんか。もし、きっかけを作るのであれば、チームでスクラムガイドの読み合わせ会なんかを開いてみると、スクラムマスターの章でそんな議論もできるのかな、と思います。
100日後に死ぬスクラムマスター – 侍れっどの明日できることは明日やれ (samuraikatamaris.red)
決してスクラムマスターが不要ということではありません。「期限付きのロール」と位置付け、いない場合を想定してみることで、新たな視点・視座からチーム全体を捉えるきっかけになるのではないでしょうか。
では、スクラムマスターはどのような視点でチームや活動全体を捉えているのでしょうか。
田中は、レッドジャーニーの中村と森實によるスクラム研修(スクラムに取り組んでいる/取り組もうとするチームのための研修)に参加した経験から、スクラムマスターのチームへの関わり方について気づいたことを紹介しています。
【一方的に聞いているのではなく、一緒に学び合う場】
研修・講習となるとどうしても講師→受講者の一方通行になりがちです。
受講者側もより多く学びを得るために能動的な姿勢で、講師側も受講者から学びを得る姿勢で研修を進めることでシナジーが生まれます。最初にこういうスタンスで進めていきましょう!という合意を取ることがとても素敵な姿勢だなと感じました。【質問=場への貢献】
「場への貢献」という表現で質問歓迎!姿勢を前置きすることで、より良い学びをもたらせると感じました。【常にフィードバックできるように人を観察する】
研修もモブワークと同様、多様な視点からフィードバックを得ることが重要ですし、スクラムマスター的に一歩引いて、気になるところに気がつける視点が重要だなと感じました。【常にWhyを意識する、立ち戻る】
スクラム研修に参加して得た視点|もっくま(Mistletoe) (note.com)
単純にスクラムこうすればいい、うまくやるためのTipsはこう、ではなく変化に適応していく、ということの重要性を芯から理解できると、ブレない改善を継続できるしっかりとした土台ができあがるんだなと感じました。
幅広い視点を持ち、状況の変化に柔軟に対応することが求められるスクラムマスターは、自分自身について「ちゃんとやれているか?」という検査を定期的に行い、ニュートラルな状態を保つ必要があります。
アジャイルやスクラムには絶対的な正解はなく、組織やチームごとに自分たちで現状を確認しながら、行き先と道筋を探索し見つけていかなくてはなりません。
難易度の高い取り組みだからこそ、本質を理解し基本に立ち返る機会を意識的に持つことが突破口となるのではないでしょうか。
▶レッドジャーニー知恵袋③スクラム編の記事の全文はこちらからご覧ください。
それでも、デイリースクラムをやらない理由とは?
チームによっては、スクラムの「型」である「スクラムガイド」の内容を、そのままは取り入れないという判断をする場合もあるかもしれません。
「型」を採用する度合いはチームに委ねられますが、「型」に立ち戻ることはやはり必要です。
型に立ち戻ることなくチームのやり方を決めていくと、「起きていることはすべて正しい」という結論に辿りつきがちであると市谷は指摘しています。
「チームで判断したことなのだから結果がどうあれ(まあ良しとする)」
「チームが判断したことなのだからその意思決定に口を挟まないで」
と、結論付けるにしても、何から考えるのか順番が大事だ。
最初に「起きていることはすべて正しい」という判断を持ってきてしまうと、チームの活動はたいてい易きに流れる。より良くなろうとするきっかけを失いかねない。
そうしたチームでファイブフィンガーを取るとおおむね「3(まあまあ)」があがる。「まあこんなもんかな」が大勢を占める。そして、チームにはなんとも言えないモヤミが漂い。特別良いわけでも悪いわけでもない状態が支配的になる。だから、型と向き合う時間を置いておく。チームで型に向き合い、自分たちとの差分を取るようにする。ふりかえり、むきなおりの時間がちょうど良いだろう。
それでも、デイリースクラムをやらない理由とは?|市谷 聡啓 (papanda) (note.com)
チームで行う「ふりかえり」「むきなおり」の場として、毎日の「デイリースクラム」を提案しています。
もし、チームの状態が思っていたほど良い状態にはなっていない、なんとなくモヤミが漂っている、のだとしたら、その上でデイリースクラムを試さない理由はなくなる。というのは、アジャイルとは「いかに早く状態の問題(異常)に気づき、必要な手当を早く行えるか」にその意義の一つがあるからだ。
それでも、デイリースクラムをやらない理由とは?|市谷 聡啓 (papanda) (note.com)
スプリントを採用している限り、その長さ分の中で異常検知ができる可能性がある。それでもチームがよくならないとしたら、自分たちの思うようにいかないとしたら。その異常検知のスパンを短くするのが手立てになる。つまり、デイリーで。場合によってはさらに短く。
こまめに自分たちの状態を自分たちで捉えるようにする。至極簡単な理屈だ。あとはどのくらいの頻度(ほぼ日?毎日?半日?)でおこなうか、どういう集団でおこなうか(文脈を共通にしたい、できる範囲とは)、何を問うかを自分たちの状況に合わせて調節すれば良い。正解は一つではない。
デイリースクラムはスクラムの基本的なプラクティスですが、頻度の高さに必要性が見出せなかったり、時間の確保が難しかったりといった理由で割愛されることが多いかもしれません。
省くのは簡単ですが、その場合は、
「型」で言われていることができていないことは本当にチームにとって良い状態なのか?
「型」ではなぜこのプラクティスを推奨しているのか、その意義を自分たちは捉えられているのだろうか?
という視点で自分たちの状態を見つめ直す必要があります。
チームで「型」と向き合い、自分たちの状態を見つめ直すための時間が「ふりかえり」です。
新井は、「ふりかえり」のメリットについてまとめた自身の考えを紹介しています。
ふりかえりが、アジャイルプラクティスで重要だということに異論がある人は少ないでしょう。
チームでふりかえりをする際に、何がメリットなのか、個人的にちょっと考えてみました。ふりかえりのメリット俺のベスト10|新井剛(araratakeshi) (note.com)
- カイゼンで成長を感じられる
- 同じミスや過ちを繰り返さないで済む
- 自分では気づかなかった盲点に気づける
- 他者の関心事を把握できる
- 自分では気が付かなかったカイゼン案が生まれる
- 止まってじっくり考えられる
- 客観的に物事を見る時間がとれる
- 自身の失敗や学びをチームに展開できる
- そもそも論や抜本的なむきなおれる機会となれる
- 同じテーマでチームコミュニケーションできチームビルドにも繋がる
「ふりかえり」が自分たちのチームにもたらすメリットについて、チームで考えてみることで、チームビルディング的な効果も生まれるかもしれません。
また、メンバー同士の認識の差が見えるようになることで、共通認識が形成されるきっかけとなるかもしれません。
新井は、メンバーがお互いの状態を見えるようにする「見える化」について、「必須のプラクティス」としています。
タスクボードでの見える化はアジャイルを実践していく上で必須のプラクティスだと思っています。
自分自身の中で、何がメリットなのか、ちょっと考えてみました。タスクボードでの見える化メリット俺のベスト10|新井剛(araratakeshi) (note.com)
- 頭で記憶しておかなくてよい
- 「今日やらないこと」を判別できて覚えておく必要がない
- タスクを整理することで落ち着く
- ひとつのアイテムずつ転がしていくので、達成感が得られるのが楽しい
- 抜け漏れを防げる
- 他者と共通認識を持てる
- 見える化したボードに向き合いながら指差しながら「あれやこれや」と会話ができる
- 優先順位の整理ができる
- 「今日やること」にフォーカスできる
- レーンを改造しながら自分たちの運用しやすいボードに変えられるのが楽しい
これらのメリットには、自身の成功体験や失敗体験が反映されていると言います。
アジャイルは単なる方法論にとどまらず、実践によって磨かれていきます。
何から始めれば良いか迷っている時は、まずは取り組みやすくメリットが大きい「ふりかえり」と「見える化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
また、より良いプロダクトを作るためにも、より良いチームにしていくためにも、それらと向き合う「頻度を上げる」という方法が有効です。
プロダクト開発では、プロダクトに関する情報に触れる頻度を上げること。新しいアイデアのタネに出会う頻度を上げることで、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
チームビルディングが滞ったときは、チームの状態を見える化し、デイリースクラムを取り入れて「ふりかえり」を行う頻度を上げていきましょう。
チームでの取り組みに限界や閉塞感を感じたら、異なる角度からの接点としてアジャイルコーチに頼ってみるのも一案です。
レッドジャーニーでは、経験豊富なアジャイルコーチ陣による無料オンライン相談会も定期的に開催していますので、ぜひご利用ください。
▶レッドジャーニー知恵袋④プロダクトづくり・アジャイル編の記事の全文はこちらからご覧ください。
▼組織変革についてのコラムをまとめた「組織変革編」もございます。よろしければ合わせてご覧ください。
Red Journey Advent Calendar 2023
今年もレッドジャーニーの知恵袋「Red Journey Advent Calendar 2023」を実施します。
昨年よりさらにパワーアップしたメンバーたちによるコラムリレーをお楽しみください。12月1日よりスタートです。
▼こちらでご覧いただけます。
関連サービスのご案内
アジャイルから始める組織変革スタイル
「エナジャイル」は、数々の組織で変革の現場に立ち会ってきたレッドジャーニーがご提案する「アジャイルから始める」組織変革スタイルです。
組織改革の鍵を握るのは個々人の行動変容です。行動変容の拠りどころとなる「小さな型」をもとに、変革の「足場づくり」からともに進めていきます。
▶詳しくは特設ページをご覧ください。
関連書籍のご案内
『組織を芯からアジャイルにする』 アジャイルの回転を、あなたから始めよう
本書は、ソフトウェア開発におけるアジャイルのエッセンスを「組織づくり・組織変革」に適用するための指南書です。
ソフトウェア開発の現場で試行錯誤を繰り返しながら培われてきたアジャイルの本質的価値、すなわち「探索」と「適応」のためのすべを、DX推進部署や情報システム部門の方のみならず、非エンジニア/非IT系の職種の方にもわかりやすく解説しています。
アジャイル推進・DX支援を日本のさまざまな企業で手掛けてきた著者による、〈組織アジャイル〉の実践知が詰まった一冊です。ぜひご一読ください。
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多くの組織にとって、組織活動にアジャイルを適用していくという挑戦はまだこれからと言えます。
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