スタート当初から深刻な状況だったデジタル人材の育成問題。
今回のプロジェクトは開始から2年が経過していますが、この間に「プロジェクト存続の危機」を感じたようなタイミングはあったのでしょうか。
スタート当初から人と運営に関することが悩みの種でした。とにかく先が見えない状況で危機感がありましたね。
特に、DXプロジェクトを担える人がいないという問題が最も深刻でした。一つの案として日本生協連の本体とは別に新しい組織を作ることも考えました。それだけ人がいない、体制が整わないというのは危機的な状況です。
人材育成や人事制度を担っている部署でもDXを組織的課題として重視していますが、デジタル人材の育成となると口をそろえて「どうしたらいいのか?」と。方策が分からないのです。
デジタル人材と一口に言っても、役割によって3種類に分かれると思っています。企画する人と開発する人、そしてマネジメントを担う人です。
新たな企画の下、サービスをリリースした後もカイゼンは常に継続していきますから、企画とマネジメントに関しては絶対に内部でノウハウを蓄え人材を育てていく必要があります。企画とマネジメントの両輪あってこそのプロダクト開発です。
ですから、レッドジャーニーの登場は大きな転機になりました。まさしく企画とマネジメントの部分を、市谷さんが担ってくれていますよね。日本生協連の最も弱い部分をカバーしてくれていると感じます。
まだ道半ばですから、引き続きともに取り組んでいけたらと思います。ここまでの取り組みで特に印象に残っていることや変化を感じられるところはありますか。
メンバーそれぞれが責任感を持ち、生き生きと仕事をしているのが一番だと思います。
まだ仕事を覚えていく段階にいる若手世代が多く、アジャイルな方法で仕事をした経験もほとんどありませんでしたが、今では不足感はありつつも滞りなく仕事をこなせるようになってきました。
仕事ですから個々に悩みもあることでしょう。分かりやすく成果が見えないと腐ってしまいがちなのも若手の特徴ではありますが、だからこそ彼らが元気にがんばれている職場は率直にいいなと感じます。
全国の協同組合がつながり協働する、DXは絶好のテーマ。
今後の活動で、期待されることをお聞かせいただけますか。
プロジェクトをさらに進める上では、現場のメンバーと推進経営側とで定期的にコミュニケーションをとる必要があると思います。意見交換をすることで互いのやるべきことや役割が明確になりますから、半期に一度はそうした機会を持てるのが理想です。
現場のメンバーはみんな真面目です。新しいことを吸収する意欲が高く、例えば市谷さんからアドバイスされたことは素直に聞いて実行しようとしています。さらに他の組織や外部の人との関係性もあるなかで、よく頭の中を整理して仕事に取り組めているなと感心して見ています。だからこそ、彼らが悩むことのないように、プロジェクト内だけではなく組織を動かしている層とのコミュニケーションが重要です。
アジャイルな取り組み方が求められるのは現場のメンバーだけではないはずです。新しいことへの適応ということでは中間から上の経営層の方が過去へのこだわりが強く難しいと感じます。もちろん世代だけではなく性格もありますから、それぞれにフィットするアプローチでアジャイルに取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
では最後に、今後の展望について聞かせていただけますか。
生協ならではのDXをやり遂げたい、DX-CO・OPプロジェクトを絶対に成功させたいと思っています。
生協は協同組合であるわけですが、本当の意味での協同組合とは複数の人が共通の目標に向かって活動するために作られた組織です。長年そこに身を置いてきて、矛盾を感じることがあります。それは、協同組合間でうまく協働しているモデルがあまりないということです。そんな矛盾を解消してくれるような、協同組合ならではのDXがあるのではないかと考えています。
DX-CO・OPプロジェクトは文字通りDXを看板に掲げているプロジェクトです。DXプロジェクトの大半は失敗に終わると言われますから、数少ない成功例を意識して倣うことはもちろん大事です。とはいえ、成功例と一口に言っても組織のありようはそれぞれ違いますし、アプローチの違いも当然あるでしょう。そもそもDXやトランスフォーメーションの定義づけも経済産業省や経団連を含めぞれぞれ違いますが、恐らく本質は同じなのではないでしょうか。
一時的な流行語としてのDXではなく本質的な意味でのDXは、組合の垣根を越えた共通のテーマです。これほど共通するテーマは他には思い浮かびませんから、組合間をつなげてくれる理想的なお題と言えますし、このお題のもと果たしてうまく協働していけるのか、試されているような気さえしています。もちろん絶対に成功させたいです。
力強いお言葉です。私たちも引き続きともに取り組んでいきたいと思います。今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。