「ひととおりを体験する」狙いで取り組んだ「仮説検証型アジャイル開発」修練プログラム。
確か、萩原さんとはCode for JapanのSTO創出プロジェクト(Social Technology Officerと称する、NPO版の最高技術責任者を創出する取り組み)で最初にお会いしたと記憶しています。そこでの仮説検証のワークショップなどを通して、徐々につながりが深まっていきました。
今回、いろいろな方法があるなかでレッドジャーニーの「仮説検証型アジャイル開発」修練プログラムに取り組もうと思われたのはどのような理由からでしょうか。
新人が多かったため、本当にやり切れるのか不安はありましたが、「ひととおりを体験する」というのは、なかなか得られない体験だと思ったからです。
本来は仮説検証のプロセスを2~3往復できるのがベストだと思いますが、最初の一周だけでもまずはやってみて、そこでの失敗をもとに今後のキャリア形成を考える、きっかけ作りとしてもすごく良いのではないかと思いました。
「実際にひととおり体験する」ということが重要だったわけですね。この3ヶ月間は密度高くやり切った感じでしたが、取り組んでみてどのようなことを感じられましたか。
受講生の様子を見ていると、やはり経験してみることが必要だと感じました。取り組む前と後とでは関心の幅が全然違うのではないでしょうか。プログラム後の受講生のふりかえりでも、取り組んだことで足りないものが何なのか分かったという声が聞かれました。
取り組みに臨む受講生の様子は、萩原さんの目にどのように映ったのでしょうか。
やはり向き不向きはそれぞれありますから、苦しんでいた人も中にはいたような気がしますが、若手だからこそ自分たちで吸収して学ぼう、変えようという姿勢はすごくよく見られた気がします。例えば、時間の使い方やレビューを依頼するといった基本的なことからご指摘いただいたことで気づきがあり、良かったのではないでしょうか。
そこは本当にそう思いますね。レジリエンス性といいますか、1つの失敗から総崩れになっていくのではなく、自分たちなりに立て直して次への一歩を踏み出していくというところは、今回の皆さんの特徴だったのではないかと感じます。
そうですね。受けるべき指摘は受けとめる一方で、譲れない信念は曲げずに進められていたと思います。例えば、プログラムの序盤で行ったゴールデンサークルのワークショップでは、「まるで迷路に入ったようだ」という戸惑いのコメントもありましたが、最終的には「自分たちが本当に立ち戻るべきところがどこなのか、をよく議論できた」というコメントに変化していきました。
はい。最初に決めたことに固執することなく、しかし立ち戻りもちゃんとされていたと思います。
ゴールデンサークルは、迷ったときに立ち返る強力なポイントになる一方で、決めたことに引っ張られがちなので、一長一短、使い方次第だと思います。
また、それ自体が目的になってしまうと、できあがった後そのまま立ち戻りをすることなくただ消化していくような感じになることもよくあります。
その点、今回の受講者の皆さんは、よく物事を考えながら進められていたのが印象的でした。
一歩外へ踏み出すことで、新しいつながりができる。
今回のプログラムのなかで参考になったことや、今後も続けていきたいと思われたのはどのようなことでしょうか。
「形にして、対話をする」というところが一番大きいと思います。
机上で理論を組み立てることはもちろん大事ですが、具体的にどうなのか、というところにつなげることは難しいです。もちろん、具体的なものを形にしてアウトプットすることでいろいろな指摘を受けることになるわけですが、まずはその指摘を引き出せたことが今回一番よかったのではないでしょうか。
そうですね。うまく引き出せないまま進んでいくと、結果的に取り組みも良くなっていきませんし、関係者との期待合わせもできないなどの不都合も起きてきます。
指摘を引き出すためにアウトプットベースでやるというのはアジャイルの考え方にも通じるところで、今後も皆さんに続けてもらえたらと思います。
アドバイスありがとうございます。他にも、正解になるかどうかはさておき「一本筋を通す」というところは、しっかり検討できたような気がします。小さく試すけれども、一本大きなものを構想するという感じです。
今回の取り組みのように、プログラムを進めながら伴走もするというスタイルについてはどうお感じになりましたか。一般的にはプログラムのワークショップ時だけ参加者とコミュニケーションするスタイルが多いですが、今回は実際の事業づくりの場面のように伴走しました。
贅沢な3ヶ月を過ごさせてもらった気がしています。今回は若手が中心でしたが、より経験豊富なメンバーでやってみても良いかもしれません。
そうですね。受講する方の傾向によって進め方も最適化していきたいと思います。
最後に、今回の仮説検証やアジャイルの取り組みを、今後どのように活用していきたいと思われますか。
アジャイルや仮説検証という考え方は、ここ数年で社内でも浸透してきています。いよいよ、実践しながら自分たちで学び、カイゼンを繰り返していくという取り組みを本格化するべき時がきていると感じています。
エネルギー業界だけでなく、金融や製造など他の業界でも危機感をもってアジャイルの取り組みが進められています。
既存のビジネスが磐石であればあるほど、新しい取り組みに踏み出すのは難しいと思います。特にエネルギー業界は既存のガス事業、電力事業についてはお客さまの数も多く、供給の安定性も求められることから、「その枠組みを飛び越えてやっていこう」「失敗を許容しよう」という動きにはなりにくいですよね。
一方で、そのような業界でも危機感をもって「新しい取り組みや事業を起こさなくては」と考える人もいます。レッドジャーニーとしては、そういう方々をこれからも支援していきたいと思っています。
萩原さんとも、思いがけない偶然の出会いから始まって、今回このような取り組みへとつながり嬉しく思っています。仮説検証やアジャイルの取り組みが継続していけるよう、今後もできる限り支援していきます。
よろしくお願いします。2年前の自分には、今回のようなプログラムを行うとは想像できませんでした。一歩外に出たことで会社の外でつながりができ、社内で取り組みを実践できたことを幸せに感じます。若い人たちにも、どんどん外とのつながりを持ってもらえるような場を作っていけたらと思います。
「ともに考え、ともにつくる」をどのように実行していくか。
振り返ってみると、いつも萩原さんのパワーに引っ張ってもらったような気がします。失敗を恐れる心理にも向き合いながら、その力はどこから湧いてくるのでしょうか。
社内のメンバーと話していると、そのような心理が働きつつも、本来の守備範囲はしっかりおさえる一方で、「もっとよくしていきたい」という信念も持っていることが分かります。与えられた役割はもちろんこなしつつも、それ以外のところももっともっと、と貪欲な気持ちがあるということです。だから私は、そういう人たちがどうしたら輝けるのかを考えていて、これがパワーの源泉です。
そうだったんですね。本来は、主力となる既存ビジネスがあるからこそ、新しい取り組みをはじめることに適した、チャレンジできる環境と見ることもできます。ここに踏み出しにくいことが、日本企業全体の課題感だと感じています。
当社での挑戦に関心を寄せ中途入社してきてくれた方にこそ、活躍の場を作らせていただき、まさに「ともに考え、ともにつくる」を企業でどのように実行していくのかが最大の課題です。
そういった取り組みをハードルを感じることなく、軽やかにできる状況を作れたら、日本企業ももっといい環境になるのではないでしょうか。
そうですね。永遠のテーマとなりますが、異なるバックグラウンドを持った人たちが、どのようにして協業し事業や社会をつくるのか、この点について、今回のプログラムでは重要なエッセンスを教えていただいたと思います。
今回は、「形にすること」や「対話をする」といったことの重要性を若手メンバーたちに伝えられたのは大きな一歩でした。今すぐ業務に活かせることはもしかしたら少ないかもしれませんが、しっかりと今後に活かしていってほしいと思います。
そうですね。今日はお時間をいただきありがとうございました。