『特集 アジャイルの視点』では、アジャイルの考え方を様々な切り口でお伝えしていきます。

不確実性の高い状況下において「探索」と「適応」のためのすべとなるアジャイルの取り組みは、困難な道のりの連続です。行き詰まったときや、なかなか越えられない壁に直面したとき、「原点」に立ち戻ることで新たな景色が見えてくることがあります。
いつでも立ち戻ることのできるアジャイルの「道しるべ」として、この記事をご活用いただければ幸いです。

今回のテーマは、「プロダクト開発のはじめ方」です。

プロダクト開発を進める上での要点とは

プロダクト開発を進める上での要点とはどんなことでしょうか。

プロダクトマネージャーやプロダクトオーナーなら、恐らく「プロダクトがどうあるべきか」に焦点をあてて考えるでしょうし、そこに自分の時間を最も多く使っているでしょう。

注意すべきは、焦点のあて先や時間の使い方は状況とともに動いていくということです。

日常においていつの間にか、「ユーザーのことが思い出せなくなる」、「チームは居て当たり前」、「プロダクトは何をするにしても手間がかかる厄介な存在」、という状況になっていることは珍しくありません。

「焦点のあて先を動的に変えていく」ことができなければ、判断とふるまいが「今ココ」の実情とフィットせず、良い状態を保つのが難しくなってしまいます。

一方、ビジネス面での結果(数字)には焦点があたりやすく、気づけばKPIのことで頭がいっぱいという状態に陥りがちです。
「日々の運営における最適化」という点では、ビジネス面での結果(数字)に焦点をあて考える時間を使うことは理にかなっていると言えます。

しかし、開発についての評価基準やチームとしての優先事項など、あらゆる観点を「数字」に最適化してしまうと、致命的に「失われる面」がいくつも出てきます。

特に見失われがちな「ユーザー」「チーム」「プロダクト」の3つの観点から、スプリントごとに「今ココ」の点検を行うようにしましょう。

3つの観点から「今ココ」の点検を行おう

  1. ユーザー
    ユーザーを捉え直す機会を意図的に設ける
  2. チーム
    チームの状態に関心を向ける(チームとして十分に機能しているか、向上感があるかなど)
  3. プロダクト
    品質を高め、ユーザーに価値を届け続けられるよう、機能開発と負債解消を進める

▼参照

仕事の進め方自体の仮説(進め方仮説)を立てよう

変化し続ける「今ココ」の実状を捉え、「プロダクトがどうあるべきか」の問いに向き合い続けるためには、「探索」と「適応」の動きが欠かせません。

ところが、「探索」「適応」を軸としてプロダクト開発を始めると、やがてぶつかる壁があります。
期間や予算、成果物といった外からの期待と、自分たちの活動との食い違いです。

同様の食い違いは、チーム内のメンバー間でも起こります。

仕事の進め方自体の仮説(進め方仮説)を立てて可視化し、内と外への透明性を高めることが必要です。

進め方仮説がないと起こること

  • どこへ向かいたいのか、どこにたどり着きたいのかがあいまいで、当面の仕事としてやるべきこと、必要なことが見出だせない。
  • 「とりあえず手当り次第に」が動き方となり、やってみた結果を測るための物差しがなく、学びが得られにくい。
  • 個々人で思い描く範囲が広くなり、「ひとまず向かいたい先」「そこに至るための算段」がバラバラになりがち。
  • あいまいで、気持ちの悪い状態が続くことで、チームメンバーによってはその状態が受け入れ難く、ストレスを抱えることになる。

「進め方仮説」とは、仕事の進め方や探索の方向性を描くものです。
プロダクトやチームについて仮説を立てるように、進め方仮説を立てましょう。

仮説を立てるならば、当然に検証も行い次の判断を磨いていきます。
大事なのは、「思い出したら進め方を見直そう」ではなく、見直す機会を先に約束しておくことです。
そこまで進めてきた道程から学びを得るための「ふりかえり」と、そこから向かうべき先を捉え直す「むきなおり」を、一定の間隔で実行するよう予定しておきます。

そうすることで、進め方のプラン自体を機動的に変えていくことができます。

探索適応が必要とされるのは、不確実性の高い状況下です。
分からないことが多いからこそ、分かったことを確かめながら進んでいきましょう。

分からないことをできるだけ少なくするために、ともに取り組む相手の考え方やスタンスを知っておいたり、使い慣れたツールや得意なやり方を活かすことも必要です。
私達が挑んでいるのは、不用意に、多くの分からないもので組み立てて勝てるほど容易な仕事ではないのです

みんなの知見を寄せ合い、「どこへ向かってみたいのか?」「どうやって進めていけばいいのか?」を確かめることから始めてみましょう。

▼参照

探索的な活動で「線表を引く」とはどういうことか

「進め方仮説」は、チームや組織の動きを支えるための最小限の「方」と言えます。
仮説を立てて検証しながら進んでいくための線表のようなものです。

ところが、「アジャイルではスケジュールは引かない」としてスケジュールとともに落とされたり、「プロセスばかり考えても仕方ない、とにかく手を動かそう」として始末されたりといったことが頻繁に起こります。

アジャイルのような探索的な活動で「線表を引く」とはどういうことでしょうか。

出発地点(From)から到達したい状態(To)へ、「何をどうしてどうなるつもりか」という算段(作戦)を立てて可視化します。

どうしたら辿り着けるのか?
どんな条件を満たしたら、到達したと言えるのか?
到達するために、いつまでに何をどうするつもりなのか?
仮説を立ててスケジュールに落とし込みます。

進めるうちに「つもり」が定まり、線表は変化していきます。
予定通り進むことではなく、内と外への透明性が高まることに主眼を置きましょう。

進め方仮説の可視化がもたらすこと

  • 自分たち自身が進め方を理解できる
  • 現在地点を把握(評価)できる
  • 後付けの期待をあぶりだせる

▼参照

非効率な仕事の進め方や組織を変えていきたい方へ

これまでの仕事 これからの仕事
たった1人から現実を変えていくアジャイルという方法

これまでの仕事 これからの仕事

私たちは日々仕事に没頭し、急激な社会の変化に対して新しいアプローチを考える余裕がありません。
行き詰まるプロジェクト、組織に広がる疲弊感……現実はただ待っていても変わることはありません。

そうした現状を打破するために、ソフトウェア開発から誕生したアジャイルという手法が、様々な分野で今日注目を集めています。
しかしその実践には、組織や現場の理解を得て、協働に参加してもらうという大きな壁があります。

大事を始める者は、いつもひとりから。
苦しい現状から歩み始めるあなたに、アジャイルの前線に立ち続けた著者自身が培った20年の経験と知識を本書を通じてお贈りします。

目次

はじめにだれかが変えるのをただ待ち続けるほど,人生は長くない
第1章「数字だけ」から,「こうありたい」へ
第2章目先の効率から,本質的な問いへ
第3章想定どおりから,未知の可能性へ
第4章アウトプットから,アウトカムへ
第5章マイクロマネジメントから,自律へ
第6章1人の知識から,みんなの知識へ
第7章縄張りから,越境へ
終章思考停止から,行動へ

詳細はこちらの特設サイトをご覧ください。

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