レッドジャーニーでは、これからアジャイル開発に取り組もうとしているチームや、すでにアジャイル開発を導入しているけれど、なかなかうまくいかないチームを、コーチングやメンタリングで支援しています。

今回は株式会社バニッシュ・スタンダード様にインタビューを行いました。もともとチームで取り組んでいたスクラムイベントがつらかったというご担当者様。アジャイルコーチが関わる前のチームの状況や課題、関わってからの変化、未来に向けて取り組みたいことなど、率直にお話しいただきました。

株式会社バニッシュ・スタンダード様は、実店舗の販売スタッフをDX化することで、自社ECサイトでのオンライン接客を可能にするサービス、「STAFF START(スタッフスタート)」を企画・開発・運営しています。
「STAFF START」を利用するブランドは2,100を超え、ECサイトの売り上げの向上はもちろん、スタッフのモチベーションアップといった好循環を生み出しています。

話し手:株式会社バニッシュ・スタンダード
聞き手:株式会社レッドジャーニー

目次

アジャイルコーチが関わる前の状況と、感じていた違和感

レッドジャーニー 中村:今日はよろしくお願いいたします。ざっくばらんにお話しを聞かせてください。
2022年5月より私が関わり始めて約7か月ですが、まずはアジャイルコーチが関わる前はどんな状況で、どんな課題があったのかお聞かせください。

株式会社バニッシュ・スタンダード 植村様(以下、敬称略):元々サービス開発チームでスクラムをやっていると聞いていて、私は後からジョインしました。その時点である程度”朝会をやってふりかえりをやって…”といったフォーマットはありました。

ある時点からスクラムマスターをやってほしいと言われたのですが、いま思うとスクラムはやっていなかった感じでした。課題感としてはスクラムがスクラムではなかった。発言が少なくてチームと呼んでいいのかな?と感じることもあり、共通理解がないという感じでした。

中村スクラムっぽい何かはやっていたけれど、いま思うと、それはスクラムではなかったということですかね?

植村そうですね。そこははっきり言えると思います。なんか気持ち悪かったですね。

株式会社バニッシュ・スタンダード 山田様(以下、敬称略):私も言い方が違うだけで同じことかもしれないのですが、一番は開発業務が属人化していて、企画やプロジェクトという単位で見た短期的なスループット(一定時間の処理能力)はそれなりに出ているかもしれなかいが、中長期的なパフォーマンスはあがらないという状況でした。また、粒度が揃ってないかもしれないけど、スクラムが形だけのものだったというのは私も感じていました。

植村:スクラムイベント、つらかったですよね…。

山田:つらかったですね。それには2つ問題があると思っています。1つは業務的な問題。そもそも属人化が解消できていなくて透明性がどうしてもあがらないこと。もう1つは、人としての文化や雰囲気。その両面に苦しんでいた感じかなと、いま考えると思います。

中村:植村さんの「つらかった」というのは印象的ですね。つらいスクラムイベントはときどき見かけます。
そんな中でアジャイルコーチが必要だと思ったり、レッドジャーニーとやってみようと思った理由のようなものを教えていただけますか?

山田アジャイルコーチについては私が意思決定したのですが、いま言ったようなことを解消、改善したかったということに尽きるのですが、スクラムをきちんと運用して、チームの自律性を上げたいと思ったからです。
例えば、上手くいってることもそうでないことも、チームが自分たちで認知して改善できるとか、属人化が解消されて中長期的なスループットを上げるとか。もっとメタな会話をしてチームとしての成熟度を上げたいというものがありました。
また、私が考えるマネージャーという役割の裏テーマとして、そういった体験を通じてみんなの働くエンゲージメントを上げたいというものがあったんです。

中村:なるほど。山田さんは前職でも支援させていただいたことがありましたよね。

山田はい。なぜレッドジャーニーなのかというところで言うと、前職で中村さんに支援していただいた経験があってそれが良い体験だったからということがあります。
もっと時間をさかのぼると、実はレッドジャーニーに支援してもらう前に、別の会社のコーチングを受けたことがありました。私のチームではなかったのですが、正直、私には微妙に見えました。コーチの支援がある間はスクラムをやってはいましたが、イベントで一日作業ができないという日が、いまの私たちと同じようにあって。でもやってるメンバーもそれに対して不満を言ってるし、まわりのメンバーやマネージャーも「ミーティングばかりでつくってないな」といった割と短期的な評価を下していて、そのアジャイルコーチの支援が終わったらスクラムもやめていたんです。

中村ありがとうございます。それを聞いていて植村さんはどう思いましたか?

植村「アジャイルコーチをお願いしようと思う」という話を聞いた時は、期待感がめちゃめちゃありました。ちゃんとみんなが同じスタートラインに立てるような期待感が大きかった。つらかったイベントに何かしらの改善がされるかもということを期待していました。

中村 洋の第一印象と、印象に残っている出来事

中村そんな植村さんの第一印象としてはどうでしたか?例えばヒアリングしたり、会議室に集まって初めて会ったときなどの第一印象は?

植村明るくて話が分かりやすくて、頭のいい人だなと思いました。それから突っ込みが鋭い印象を持ちました。場がちゃんとするというか、だれない。すごいなと思いました。

山田私は前職からバニッシュ・スタンダードの空いている期間も、1〜2ヶ月おきにお話しさせていただいていて、それを個人的にはメンタリングととらえていたので、第一には安心感が大きかったです。

中村:ここにいらっしゃらないチームのメンバーのなかでも、第一印象がどうかといった話しは出ていましたか?

山田:出てましたよ。怪しんでいる人もいました(笑)。話している内容やテンションも含めて、当然いつもポジティブでいてくれるわけじゃないですか、アジャイルコーチって。それが本当なのか、みたいな。そんなうまいこといきます?みたいな発言があったのは覚えてます。

中村:ま、そんな都合よくはいかないですけどね、やってみてわかったと思いますけど。
では、実際に8ヶ月ほど一緒に活動してみて、それぞれ印象に残っている出来事などありますか?

植村:特別これといったことではなくて、中村さんの振る舞いが印象深く、毎回勉強させてもらってる感じでした。引き出しが多いとか、場の空気をつくるのがすごく上手だし、ちょうど議論が発生するような球をヒョイと投げ込んでくれる。そのタイミングだったりワードだったりがすごいなと思っています。そういう振る舞い、行動がすごく印象的です。

山田:私はアジャイルコーチの支援を始めて1〜2ヶ月くらいでチームの士気が一気に好転したことが、最初の印象的な出来事でした。
現時点では退職したメンバーなので微妙なのですが、コーチングをする前はチームに対してくすぶっているという話をしてくれたメンバーがいました。このチームにいても自分の成長やキャリア形成が難しいかもしれないと言っていたそのメンバーが、1~2ヶ月のアジャイルコーチとの体験を経て”もう一回ここでアジャイルとか価値観を習得したい、経験したい”と言ってくれたのが一番最初に感じた大きな変化かなと思います。

中村:明るいとか上手くいくのかなと思ったといった話しがあったことで思い返してみると、いろんな現場がある中で、バニッシュ・スタンダードさんのあのチームはどこか冷めているというか、やっても仕方ないよね、みたいなところがあると感じていました。せっかく腕前があるのに、そこらへんがちょっとバラバラになってるかなといった感じで。
べつに自信過剰なわけでもないので、むしろ一個一個やっていたらちゃんとできるよ、という感じで、意図的に前向きな度合いを強くしていた気はします。元々腕前があるのはわかっていたので、もう少し整えさえすればもう少し変わるのかなと思っていました。当時は職人さんみたいな方が多かったじゃないですか。

植村:めっちゃ印象悪いですね(笑)

中村:(笑)なので、印象に残ってるのは、みなさん変わったんですが、ある人は、私の第一印象からはとても変わったなと思っています。あそこまでこの短期間で変わるんだと思いました。元々そういう性質があった方が表に出てきただけかもしれませんが、とても変わったなと思って見ていました。

アジャイルコーチが関わることで起きたこと

中村:このようにアジャイルコーチが関わることで起きた変化としてどのようなことがあったでしょうか?

植村つらくはなくなりましたね、完全に。ポジティブにいろいろと取り組めるようになっているし、話もちゃんとするようになっている。発言がちゃんとできるようになったので、いまならチームって呼んでもいいと思います。信頼感があります。

後から入ってきたメンバーが何かでつまづくかなと思いましたが、そんなことはなくて、入ってきた人の性質が良かったのもあるけど、職人集団がチームとして同じ方向を向いているというのをすごく感じるようになりました。これがスクラムか!って感じかな。

山田植村さんも変化したと思います。スクラムマスターという役割に意欲をもってくれている。元々関心を持ってくれていましたが、私の力量不足もあって、あまりポジティブな役割に見せてあげられなかったなと思うんです。でもそこに成長やキャリアの未来を見出してくれるように変わったなと思います。

全体で言うと、重複しますが、メンバーが互いを思いやったりフォローしたりできるようになったと思います。
それは単純なカルチャーや雰囲気もそうだし、透明性が上がったことによってそれができるようになったんだと思います。悪人が善人になったとかではなくて「もともと私はAという仕事をやっていて、彼はBをやっているから助けようもないしフォローしようもない」というような集団だったのが、透明性があがることによってできるようになってきました。

あとは最近もありましたけど、良いと思って(その時は)やって良かったけど、だんだん良くなくなってきたようなことも、チームがそれを認知して実験するようになりました。私や植村さんが口を出さなくてもやるときがある、という力が働き始めたのも大きな変化だなと思いました。

中村:いいですね。では、中には最初は怪しんでいるメンバーもいたという話もありましたが、その過程のなかでの拒否反応とか、だいじょうぶなの?という話はなかったですか?ミーティングが多いとか、正論ばっかり言わないでよとか、なかったのかなと思って。

山田:最初はありましたがすぐ消えたといった印象です。みんなはどうなのかな?

植村:私もそこまで拒否反応があった印象はないですが、しんどいと思うことはあると思います。スクラムイベントで週に1回丸1日潰れちゃうんで。でも拒否反応などは感じなかったですね。モブワークについて懐疑的だったとかいうのはありますけど。

中村:あのモブワークはどんな経緯でしたっけ?

植村:中村さんは「モブはええでー。」って言ってくれて…なにか大きなプロジェクトでしたっけ?

山田:そうですね。目立った課題としては、”やってない人がついてこれない”というのを解消したかったのかな?

中村:やはり属人性とかですかね。

山田:そういうパーツに懐疑的なのはあったかもしれないですね。

中村:でも結局チームの選択はうまくやれているんですよね?モブやったり、ペアやったり、ソロでやったり。

山田:まだ道半ばといった感じですけどね。

■自分自身が変わったと思うこと

中村:ここまでのお話はチームのことでしたが、山田さんや植村さんの中でこんな変化があったなとか、こういうことを得たな、変わったなということってどんなことがあるでしょうか?

植村:私は話の聞き方が変わったなと思っています。”スクラムマスターは観察が大事”ということを聞いたのも大きいですが、割と私は発言する方ではあるんですが、意識的に発言しないで聞くということをするようになってきたなとは思います。いい意味で一歩引いたところで会議全体を見られるようになってきたという変化は起きてきたなと思います。

山田:私の変化は個人的なことで言うと、困りごとやつらいことをオープンにするようになった、したいと思うようになったということです。
頭の中で言語化していたわけではないのですが、多分それをしない方がいいんだろうなと行動や言動をしていた気がするんですよね。「これはマネージャーの困りごとだから、チームには伝えないで私が困っていればいい」とか、「これはプロダクトオーナーの役割だから、私が考えたり交渉すればいい」といった思考から、「いやいや一旦吐いた(伝えた)方がいいな」という風に変わりました。

その変化のトリガーとしては、私もプロダクトオーナーとしてチームの中にいるので、チームの透明性が上がっていくことによって、自然と自分も情報や思いをオープンにした方がより改善できるという、スクラムが持っている性質によって力がかかったということはあると思います。

結局クローズドになっていること自体がメンバーのストレスになったりもするんですよね。何かするにしてもしないにしても、私がどういうことで困っている、悩んでいるということを知らないことがストレスになっている。でもみんなも私が困っている、大変だということは分かるから、「山田さんは大変なんだな」とか「いま山田さんポジショントークしてるな」という見え方になってしまっていたなと思って。

透明性が上がることによって実際にそういうフィードバックをくれたメンバーもいました。「言ってくれた方がいいです」とか、「ポジショントークしていると感じるときがあります」と指摘してくれたメンバーもいました。具体的なイベントでいうと植村さんたちが、私のプロダクトオーナーの困りごとを聞いてくれる時間もありました。実際にオープンにしたことで助かったこともいっぱいあったので、それが私自身の変化かなと思います。

中村:植村さん、プロダクトオーナーの困りごとを聞く会をやったというのは?

植村:確認ですが、それはプロダクトバックログ整理の時間のあの話?

山田:じゃなくて結構前。6月とか。ちょこっとの話なので、植村さんたちにしたら、ただの1ミーティングだったかもしれない。だけど私の中ではいままで言ってなかったレイヤーの困りごとまでそこで話して、それによってバックログ整理の話をしようといったことになったのかもしれないですけど。私の中ではそれをオープンにすると、2人がポジティブになってくれるというか、自分にもチームにも。 言っていいんだ、言った方がいいんだというね。

中村:植村さん、覚えています?

植村:全然覚えてないっすね、ほんとに(笑)申し訳ないですけど。

中村:山田さんの透明性が増したのは印象としてありますか?

植村:そうですね。割と早いタイミングから、情報共有してくれるような印象はあります。ぎりぎりまで情報を握ってたりしない。目標を決めるミーティングでも、決まったことはすぐフィードバックしてくれるし。だから忙しいのにフィードバックがめっちゃ早いというのが、山田さんのいまの印象なので、それが透明性が高いというところからくる印象なのかもしれないなと、いま話を聞いていて思いました。

中村:なるほど。それに関連するエピソードで、これはチームで話したときだったか、山田さんとの雑談だったか、そういう話をしたことあるんですよね。プロダクトオーナーかつマネージャーのような役割って、どうしてもまわりから見て”なんか忙しそう”ってラベルになってしまって、しかも助けようにも助けられないみたいな。助けを出すといいんじゃないかなという話をした覚えはありますね。

■チームメンバーの変わったと思うこと

中村:では次に、他のメンバーにも変化が見られたよといった話しがあれば聞きたいなと思います。

植村:やぶさん(チームメンバーのおひとり)は変わったと思う。めっちゃ変わった。やぶさんっていままで一線引いたというか、チームの中にいるけど、率先して前に出てくるタイプという印象はなかったんですよね。それがちゃんとチームをリードするような発言や動きをしてくれるようになって、そういう動きがすごく多くなったと思いましたね。チーム全体で考えたりするような感じも受けるし。

山田:あとは業務委託メンバーが主体性を持つようになりましたね。やはりいままでは透明性の問題もあって、正社員とそこから作業を依頼される業務委託といった二枚構造のようなところがどうしてもありました。いまでもそういう側面はゼロとは言わないですが、チームのイベントなどになったら、だれが正社員かなんて区別がないくらい主体性は持てている。それもかなり大きいことだと思います。

中村:確かにバニッシュ・スタンダードさんの現場で「私は業務委託だから」とか「これはプロパーしかできないから、プロパーがやるから気にしなくていい」といった話しは全くないという印象がありますね。

山田:もちろんデリバリーの時の権限の問題などはありますが、チームのカルチャーには関係ないので。そういう意味では契約形態に関係なく主体性を持てるようになったと思います。

中村:それはすごく人がいいんですかね。不思議とすっとなじんでいる印象がありますね。

山田業務委託の方の中にもスクラムの経験のある方がいたというのもあるかと思います。「前の現場ではこうやっていました」といった発言もありました。それぐらい一般的になったアプローチなんだなというのも感じています。

他部署の反応は?

中村:では、この取り組みについてバニッシュ・スタンダードさんの他の部署の反応はいかがでしたか?

植村:カスタマーサクセスチームと関わることが多いんですが、まだ「火曜日はミーティングやってるから反応くれない」といったところかなと思います。他チームには「よくわからないけどミーティング多くなったな」という印象を持たれていそうな気はします。
マイナス面かもしれないけど、短期間に出せるものが減っているという印象は持たれている気はするかもしれないですね。今後、みんなでやるのが理想形という形のチームになったら、また違うのかもしれないですが、いまは出力は落ちているという印象は持たれているという発言は聞いたことがあります。

山田:私は植村さんとは違う見方をしてて。先ほどアジャイルコーチの支援を開始して1〜2ヶ月でチームが好転したとお話ししましたが、それはチームの外にも伝わって、隣接するチームや経営層も肯定的でした。やっぱり個々のメンバーのモチベーションが明確に変化していたので。

中村:そんなに変わっていたんですね!

山田:はい、いまの植村さんの話しとは相反するのですが、前よりスムーズに仕事が進んでいるという声も聞いています。フォーカスするポイントによって評価が変わると思うのですが、だれかの属人的な馬力に頼ることをしなくなったので、炎上っぽい差し込みに対するフレキシブルさの評価は落ちた。でももう少し俯瞰で見たら、逆の評価かもというのは感じます。

ただ、会議のことはいまでも言われます。それやめたら早くなるんじゃない?みたいな(笑)。ただそれも、カレンダーで見たら1日中埋まってるので多く感じるけど、稼働時間の何パーセントかで考えると、せいぜい20パーセントですよと冷静に思っています。
あとはやはりフォーカスする視点によって変わるんですよね。「この1週間でコードを書いてほしい」と言われたら当然火曜日のミーティングをやめた方がいいけど、「3ヶ月や1年で見たときにどっちが早いですか?」という話になると違うなとは思っています。

でも会議やめたら早くなるんじゃと思うのも自然かなとも思うので、そういう理解をつくるというのはまだできていないな。チームのすぐ外側との接点というか。会議時間が長く見えることや、チームでこういう運用にしたいとオープンにした時に何でそんなことするの?という反応も多少出るんですよね。

中村:自分たちのこれまでの考え方との違いという意味でですか?

山田:例えばコードレビューのやり方をこうしたいということをオープンにした時に、なんでそんなことするの?とか。それは変化を嫌がるというよりも、背景や理由をきちんと伝えられていないのかもしれない。このスクラムチーム以外にもエンジニアはいるので「なんでそんなことするの?そうじゃない方がうれしいんだけど。」と見えることがある。チームのすぐ外側に乖離というか違いがあります。

中村:方法の違いは、いい悪いというよりも、チームによって違いはありますよねといったことですよね。同じサッカーをするのでも、点とって勝つチームと守って勝つチームがあって、なんでこうするの?と言われても、それは勝ち方が違いますから、という話。チームとしては成熟してきていて学びつつも、さらにその周りとの接点はこれからといったことですね。

この先、取り組んでいきたいこと

中村:このように次の課題のようなものが見えてきている段階で、この先、取り組んでいきたいことはどのようなことですか?

植村:いま会社的にはスクラムをやっているのは1チーム。この先たぶん会社は成長してくれるはず。人が入ってくれるはず。だからチームを分割する時が来るはず。
その時に、中村さんが入ってくれてスクラムを上手くやったという経験を持っている人が(スクラムが良いなと思っているので私も伝えますが)、チームを分割した時にも、今回経験したメンバーが、スクラムでこうやるといいよというマインドを広げてくれるとうれしいなと思いますし、そこをどうサポートしていくのか、スクラムマスターとして未来に向けてお勉強します(笑)。
根づけばいいなと思っています。空気自体はすごくいいので、そこが新規参画の人が入りやすい背景にもつながっていると思うので、このいい空気を増殖していきたいと思います。

中村:素敵な話ですね。

山田:私はマネージャーとしてチーム体制を考える役割ですが、スクラムチームを分割するのはかなり近い将来だと思ってます。スクラムにいま入っていないエンジニアとのバランスも含めて、具体的に言うとスクラムに入っていないバックエンジニアを一緒にして2チーム。さすがに人数的に無理かなと思いますが、複数スクラムみたいなことを4月からとかやらなきゃいけない、やりたいなと思っています。

いまのチームにはまとまった退職と、まとまったジョインがありましたが、それ自体は乗り越えられたんですよね。むしろ本当に人が入れ替わった?みたいな感じで成長曲線を描いている主観です。それが分割されて新しい人が入った時に、継続できるか、よりよくできるかは挑戦のポイントだなと思います。

中村:まずはチームが2つに分かれたときに、それぞれ自主独立をもって自律をもってやっていけるかが1つのチャレンジということですね。

山田:そうですね。もうひとつは私の役割的なことですが、チーム外を巻き込んだアジャイル化が課題でもあり、楽しみなことでもあるかなと思っています。
端的に言うと1スクラムチームを正しくつくるというのは、アジャイルコーチがいるとそんなには難しくないことかなと思っているんです。ただスクラムチームがアジャイル化というか透明性が上がってチームでの合意形成ができるようになっても、まわりとの違いというか理解の足りなさというのがすぐ問題になる。いままさにそこに出会っているところなので、個人としてはそこを頑張りたいなと思っています。

スクラムチームのすぐ外のスクラムにいないエンジニアたちの課題は、そんなに難しいことではないと思います。それよりもビジネスサイドや経営層の課題や想いのキャッチアップ、調整・交渉が課題になってくると思っています。

中村:エンジニアだから分かり合える度合いが高いかというと分からないですし、バックグラウンドにも寄りますが、割と分かり合えることの可能性は高いですよね。
ちょっと距離の遠い方々との価値観のすり合わせは結構時間がかかったりするかもしれませんね。
いつだったか山田さんとみんなでワークショップをやった時の帰り際、遠からず組織を巻き込んだ話をこの規模でやったらきっと強くなれるからやった方がいいですよね、といった話しをしたと思うんですけど、割と早くここまで来ていて、うれしいです。

では最後に、お二人からひとことずつ、お願いいたします。

山田:元々私自身アジャイルやスクラムに関心やモチベーションが高かったので、いい意味で期待通り、うれしい結果でよかったなと思います。
アジャイルコーチという第三者の存在って大きいなと思いました。私がやると第三者にはなり切れず、マネージャーとしての思惑などが入ってしまう。チームが学習しながら気付きを得るという観点に立つと、アジャイルコーチという第三者って、言葉は悪いですが、とても便利なんですよね。それはいい体験だったと思っています。

植村:スクラムは前職でもやったことなく初めてでした。ひどい状態だったのと、それが成功して改善されていく過程を体験できたことがすごく良い経験だったと思います。

あと他にもいろいろ気になってきますね。他のチームやスクラム現場ではどうやっているんだろうとか、どんな悩み事があるんだろうとか。そういったことがすごく気になるようになってきたので、スクラムマスターミートアップのようなものがあったら、ぜひ参加したいと思います。ふわっと入ったスクラムマスターというポジションでしたが、今後チームがどう変化していくか、課題もあるので変化していくと思いますが、すごく楽しみですね。

中村:いいですね!うれしいです。楽しみですね。今日はありがとうございました。

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