日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)のDX-CO・OPプロジェクト(以下、DXプロジェクト)におけるアジャイルへの取り組み。そこに伴う困難をレッドジャーニーとともにどのようにして乗り越えていったのか。プロジェクトマネージャーの新井田様へのインタビュー後編です。
(聞き手:レッドジャーニー市谷)
前編はこちらから
「アジャイル」が2030年ビジョンの一つの指針になる。
レッドジャーニーと一緒にプロジェクトを進めるなかで印象に残っていることは何かありますか。
特に印象に残っているのは、やっぱり「仕事の進め方」ですね。以前からタスク管理ツールを導入してはいたのですが、あまりちゃんと使えていませんでした。機能や役割、効果的な使い方がまったく見えていないまま、とりあえず使っていたんですよね。
タスク管理のやり方からツールを使いこなすことまで教えてもらって「今までとだいぶ違うな」「こういう風に使えばいいんだ」と感じました。
レッドジャーニーさんが作成するタスクはすごく優しいんですよね。「これならできる」と思えるし、わかりやすいんです。1週間でこれをやればいいんだ、と見えるようになりました。それまでのタスクは、非常に難解だし、重かったと思います。自分で書いたものも、やっぱり書き方が分かっていないので、同じように難解で重たいものになっていました。
「タスク化して1週間のスプリントで解決していく」というのを繰り返すうちに、だんだんアジャイルの考え方もなるほど、と理解できるようになっていきました。
普段の業務のなかでやりきれていないものもタスク化していくことで「今週はこれを終わらせればいいんだ」「これは次のスプリントに回そう」とすぐに分かります。それまでは、自分なりの優先順位でとにかくやっつけていって、結局は遅くなるということが多かったのですが、その整理がつくようになりましたね。
とはいえ、最初の3ヶ月くらいは自分の中でも葛藤がありました。本当にこれでプロジェクトが終わるのか、いい結果が残せる見通しがつくのか、という迷いがありました。実際、最初の3ヶ月くらいはタスク整理ではなく、それ以前の段階でしたね。3~4ヶ月目に入った頃から、ようやく効果を実感できるようになったと思います。
まず、「何のためにこれをやっているのか」という整理をする段階がありましたね。全体の中から内容を絞って集中して取り組めるようになったのが4ヶ月目くらいからだったと思います。
チームを作るように促されてからが、大きく変化したと思います。それまでは個別のテーマについては一人ひとりで事にあたる担当者制だったので、タスクを作成しても結局自分一人のタスクリストにしかなりませんでした。
個別担当者制から「チーム体制」化したことで、タスクをチームで受け止めることができ、みんなが元気になってきたんですよね。これも転換点のひとつだったと思います。
チーム化したのはよかったですよね。こちらから様々なタイミングで提言をすることがありますが、みなさんに受けとめてもらえて、とてもよかったと思っています。
チーム化することで、今度はそれぞれのチームの中での活動の仕方について深めていく必要が出てきました。いわゆる「スクラム」を始めていったわけですが、チームでの活動について印象に残っていることはありますか。
やはりスクラムマスターでしょうか。スクラムマスターとしてチームを先導してもらったことは、すごく印象に残っていますし勉強になりました。
後追いで本を読んで知識を得たことで、とにかくメンバーの理解がスムーズで、早い段階から自分たち主導で進められるようになりました。すごいなと思います。知識を先に入れてから臨んでいても、こうはならなかったかもしれません。やはり目の前で実際に先導してもらって、それを見ながら学んでいったのがよかったのではないでしょうか。
本でまとまった知識を確認するというのも大事だと思いますが、本を読んだらできるかというと、車の運転と一緒で教本を読んだだけではできません。やはり隣に座る人がいて、その場であれこれ言ってくれるからこそ分かることは多いのではないでしょうか。
プロジェクトを進める中で、実は先に勉強させてほしいと思った時期もありましたが、たぶんそれではうまくいかなかったと今は思います。やはりついてもらって、繰り返しやってみることが大事ですよね。
最初に最小限の理解は必要ですが、その上でまずはやってみるということが大事です。やってみたら、うまくいくこともいかないこともありますから、そこでなぜうまくいかないんだろうということを、知識や原則に戻って深めていくという進め方が良いかと思います。
知識やスキルとして何を獲得していった方がいいかというのは、本人の方向性もあるでしょうから、一人一人にフォーカスして話し合う機会を持ってみてはどうでしょうか。(スキルセットを表す)「星取表」を使って各個人の現状を可視化して、今後の方向性と照らし合わせて、フォーカスしていく分野を決めていくという取り組みができたらと考えています。
なるほど。それはぜひやりたいですね。できれば、このプロジェクトに関わった人にはいろんなことを身につけていってほしいんですよね。
地域生協から参加している人にも「参加して良かった」と思ってほしいし、身につけたことを持ち帰って、地域生協での取り組みに活かしてほしいです。今はまだ忙しくて人を出せない地域生協もありますが、参加したらいい経験ができるということを伝えたいと思います。
2030年ビジョンで謳っている生協活動の未来の一つとして、レッドジャーニーがもたらしてくれたこの手法、考え方があるのではないかと今は思います。人材についてもそうです。ここで一緒に取り組み、新しいやり方を学び、身につけたことを地域生協で続けて、経営改善などの形で波及していったら素敵だと思います。
メンバー同士の動きがよく見えるようになり、お互いの知見の共有から全体が変わっていった。
私たちとの関わりを通して、一番大きく変わったのはどんなことでしょうか。
各テーマの動きが、まだ完全にではないですが、随分見えるようになったことが一番大きい変化でしょうか。チームとしては前より複雑なことをやっているのに、お互いの動きがちゃんと見えるようになってきているのは不思議な感じがします。
今ではプロジェクト全体の情報共有ミーティングもすっきり終われるようになりました。議論が浅いわけでもなく、状況がよくわからないな、ということもないのに、です。
チームからのレポーティングも内容が良くなってきて、チームメンバーの顔がちゃんと見えるような内容になってきたと思います。
最初は思いついたことを全部書いているようなレポートが多かったですよね。最近では3点くらいに絞って内容をまとめられているので、なんだかよく分からないという部分が減って、見通しがつきやすくなっているのではないかと感じます。
あとは手法をチームで共有できることでしょうか。例えば、事業部系出身のメンバーは、具体的な課題に対して達成度合いを総括するようなやり方に慣れていますが、システム部門出身のメンバーがそれを真似して取り入れるなど、知見の共有がうまくいったことで、全体が変わっていったのだと思います。
一部にはまだ連携がうまくいっていないところもありますが、タイミングを見計らって踏み込んでいきたいと考えています。