「計画的行き当たりばったり」でいいじゃない

市谷:
BIL 2.0 を実現するにあたって、記憶に残る苦労というと何をあげられますか?

菊地様:
まず、具体的な場所を決めるのには苦労しましたね。
あとは、「人」ですね。必要な役割はわかった、ではどうやって人を集めて体制を作るか? 課題はたくさんありましたし、これはもうダメか…と絶望的な気持ちになったこともありましたけど(笑)、 そんな中で実現までこぎ着けたのは、目的が明確だったからだと思います。先程もお話した「新しい文化をつくる」という目的です。

そもそも、新しい事業所を作るなんていう経験はそうそうありません。それはバックオフィス部門だって同じわけですよ。誰もやったことがないから、誰も分からない(笑)。

市谷:
「みんなの新しい挑戦」という感じですね。

菊地様:
一方で、新しい活動を始めるんだということで数多くのフィードバックやコメントが寄せられました。各所各人それぞれの経験に基づく、本当にいろんな意見が集まってくるわけです。

もちろんありがたいことなのですが、意見の取りまとめも苦労したところです。

市谷:
経験は十分にいかすべきだと思いますが、これまで組織にはなかったような活動をやるということですから、既存の「引き出し」を開いてもそこに答えは無いんじゃないか、とも考えられますよね。

菊地様:
そうなんですよ。正解を持っている人はいないわけですから、これまでのルールの「外側」を見出せるような視点があるかどうかが問われると思いました。

そういう意味では、市谷さんという、組織のバイアスを外せる人と一緒に臨めたことが一番大きかったかもしれません。やっぱり、どうしてもバイアスに負けてしまうところが出てくるじゃないですか。

市谷:
特にこういう大きなスペースをつくるとなれば、計画を精緻に立てて、計画に則り順次ちゃんとやっていこうという感じが出てきてしまうところがあると思います。

でも、みんなそれぞれにいろいろな思いがあるから一気には決められないし、決めた「てい」にもできないし、正解もありません。

少しずつ理解を合わせ、深めながら、模索していかざるを得ないですね。その中で磨かれるものもあるはずですそういう姿は、まさにアジャイルなイメージですね

レッドジャーニー
市谷聡啓
BIL TOKYO にて。株式会社レッドジャーニー 市谷

菊地様:
そうですね。「計画的行き当たりばったり」っていうか、それを僕は結構大事にしていて。

もちろん計画は立てるんだけど、その計画に対して道が1本である必要はないし、ルート変更だってざらにある。ある仮説の中で合意形成しながら進めるわけだから、最終的な目的地に至るまでは良い意味で行き当たりばったりでいいじゃない。

だからこそ、チームを組むことやチームに対する信頼感、相手に対する尊敬というようなことが大事だと思うんですよ。そうでなければどんどん道に迷っていきますから。

アジャイルに奮闘した「511日間」から見えてきたもの

市谷:
BIL 2.0 を実現するにあたって、それをつくる過程がアジャイルだったわけじゃないですか。
そうしてできたBIL 2.0 でやろうとしていることもまた、社会課題を顧客と一緒に見つけて解決していくという、答えのない探索になる。

つくる過程もアジャイル、できてからの運営もアジャイルBIL TOKYO の本質、芯にアジャイルがあるように感じます。

菊地様:
はい、これからどのようにして運営を組織的に行っていくかがテーマですね。

グループの中には社内実践で得た知見やノウハウもありますし、ソリューションも数多く存在します。それらをどう繋げていくのか。スケールが大きくなった分、これまで以上に問われます。

市谷:
いろいろなチームがそれぞれBIL 2.0 に関与して接点を作り始めている。関係者が圧倒的に増えていますよね。

もちろんポジティブなことだけど、「噛み合わせ」を良くしていくには相応の牽引力も必要だと感じます。

菊地様:
そうですね。たくさんの歯車が噛み合う部分をしっかり提示できないと、もったいないことになります。

市谷:
あらためて、今後の展望についてどんなことをお考えですか。

菊地様:
究極は、「社会に開かれた実験場にしたい」という思いがあります。ちょっと言葉は大きいかもしれませんが、価値づくりの中核を担えるくらいの位置づけになれたら。

何か新しい文化をつくろう、社会課題を解決しようというときに、「リコーのBIL TOKYO で相談に乗ってもらおう」と名前を挙げてもらえるようになるといいですねそういう時に集まって来てもらえるような認知を得たいと思っています。

株式会社リコー
菊地様
BIL TOKYO にて。株式会社リコー 菊地様

市谷:
経営と現場、それぞれに近い人が一緒に来てもらえると良いのでしょうね。

経営者の方にはこれまでにはない新たな価値の手がかり、夢を語っていただきたいですし、一方で、それを駆動し実現していくには現場の方の思いが必要です。新しい文化づくりには、その両方が欠かせません。

最後に、何かメッセージをお願いします。

菊地様:
BIL 2.0 を実現するまで、実に511日間かかりました
市谷さんたちが入ってくれたことで、511日間の活動の中でもアジャイルで小さくはやく回せたっていう手応えを感じるんですよ。

日数だけ見ると随分時間がかかったように思われるかもしれませんが、私にとっては毎日が戦いみたいな感じで、あっという間でした。

目的を明確にし、やりたいことに立ち戻ってちゃんと考えるということを、ずっと細かく回していたら、気がつけば511日が過ぎていました

市谷:
そんな「いくさ」の日々を乗り越えて、次のチャレンジに入っていくわけですね。

菊地様:
お客様との価値共創では、511日もかけずにやっていきたいと思っています(笑)。

株式会社リコー 菊地様
株式会社レッドジャーニー 市谷
BIL TOKYO にて。株式会社リコー 菊地様(右)、株式会社レッドジャーニー 市谷(左)