「道を拓く。」をフロントメッセージに、新たな価値創出をコラボレーションによって醸成していく場、「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(以下 BIL TOKYO)」。2024年2月に品川エリアへと場所を移し、広さはこれまでの20倍へと拡張。新たな共創活動がスタートしました。その特徴は、「対話」から始める課題探索・仮説検証を重視した共創のプロセスにあります。どのようにして企業の垣根を超え、持続的なコラボレーションを生み出し続けるか? BIL TOKYO の第2章をはじめるにあたって、私たちレッドジャーニーは特に共創活動の設計と実践の支援にあたりました。運営責任者を務める株式会社リコーの菊地英敏様とともに、その過程をふりかえります。

【話し手】株式会社リコー 菊地英敏 様
【聞き手】株式会社レッドジャーニー 市谷聡啓

※内容や肩書は、対談を行った2024年6月時点の情報です。

お客様とともに「文化」をつくるための拠点

市谷:
BIL TOKYO の第2章をはじめるにあたって、何を狙いとしたのか、どのようにしてこの場を作り進めたのか、共創の場づくりの過程をふりかえっていきたいと思います。

まずは、あらためてBIL TOKYO の概要をお聞かせいただけますか。

菊地様:
BIL TOKYO は、2018年9月から運営をはじめました。お客様を招いて一緒に「ありたい姿」を模索しながら、新しい価値を創っていきましょう! という狙いがありました。

BIL TOKYO 公式サイト

ところが、当初は会議室ほどの広さの一つの部屋でしかなく、お客様と膝をつきあわせて二度三度と作戦会議をするにはスペース的にムリがありました。

何か新しい価値を模索しましょうと言っても、相手と同じ空間で同じ時間を密に過ごさないことには、方向性の糸口がつかめません。そうした継続的な活動を行うためには、相応の場が必要だと痛感していました

市谷:
ただ物理的な場として会議室が並んでいれば良いわけではなく、共創を刺激するような知的な場、スペースが必要だったということですね。

菊地様:
はい。共創を前に進めるための体制やチーム、それらのチームがどのように動くかというプロセスも必要です

そういう意味では、あらゆるものの設計が必要になるわけです。

言葉にすると大げさですが、「会社の中で新しい文化をつくる」というくらいの気概だったように思います

市谷:
新しい文化をつくる。つまり、一つの部署や組織に閉じることなく、社内外を問わず多様な人達を巻き込んでやっていくような、そんな場所をBIL TOKYO から作り出すということですね。

菊地様:
そうですね。BIL 1.0 (BIL TOKYO の第1章)のスタート時は、お客様とともに文化をつくるための拠点であり、すなわち「新しい問いを見出すための拠点」というイメージを持っていました。様々な知識や創造力にあふれた人たちが互いに対話をすることで、また別の角度から新たな問いが生まれるのではないだろうか、と。

でも、先程お話したように様々な課題があり、「文化づくり」というところにまではたどり着けずにいました

だからこそ、BIL 2.0(BIL TOKYO の第2章)では、スペースはもちろんのこと「どのように運営していくか」というところから、イチから考える必要がありました

…というようなことを、市谷さんと夜な夜な議論していましたよね(笑)。

市谷:
そうですね。どんな役割や人が必要で、フォーメーションをどう描き、どういうプロセスで取り組むか…、濃密な時間でしたね。

株式会社リコー 菊地様
株式会社レッドジャーニー 市谷
BIL TOKYO にて。菊地様(左)、市谷(右)

「共創」を深めるために取り入れたこと

市谷:
新たな運営について夜な夜な会話していたことを思い出していきたいと思います。
菊地さんがもっとも印象に残っているのはどんなことでしょうか?

菊地様:
「段階」のアプローチを取り入れたことですね。
今も活動の礎になっていますが、いわゆる、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションという構造化されたアプローチを取り入れて良かったと思っています

お客様の多くは、最初は「タイ」(デジタイゼーション)や「タライ」(デジタライゼーション)といった課題を持っていらっしゃいます。私たちも、お客様の状況や環境、思いを知るところから始めることになります。

新たなビジネス作り、価値創出といったところに一足飛びにいけるわけではないんですね

そこから会話を進めていくには、まずは「タイ」「タライ」という段階からキャッチアップしていくアプローチが合っているのですよね。

市谷:
そうですね。段階、特に私は「ジャーニー」と呼んで強調していますが、その過程そのものが学びなんですよね。一つの段階を経れば、新たな理解が得られる。そうした状況を前提として次の段階へと進む。

育んでいるのは状況理解だけではなく、それを通じた互いの関係性なのだと思います

一方で、そうした旅に臨むにはどんなパーティが必要か。必要な役割についてもよくよく議論しましたね。

菊地様:
BIL 2.0 の共創は「山登り」をイメージしています
DXコーディネータ(お客様とのプロジェクトをファシリテートする役割)とか、アジャイル開発者・AIの技術者とか、最終的にはそうした役割を定義しましたが、山登りで大事なのは「ワンチーム」です。

最初に、ビジネスデザイナー(BIL TOKYO で最初にお客様とのセッションを担う役割)が、お客様との関係性を開いていく。対話を通じて課題の候補が見えてくる。そうした課題を掘り下げたり、広げたり、様々な視点で考えられるよう、デザインシンカー(デザイン思考に長けた役割)が料理する。

最終的には、プロジェクトのリード役となるDXコーディネータが引き続き、伴走しながら価値作りへと進めていく。

このように、様々な役割が重なり合いながら、そして専門性に委ねるところはきちんと渡しながら、チームとして動いていく。この体制の変化がBIL 1.0 からの大きな違いになっていますね。

市谷:
BIL 1.0 では、運営のすべてをビジネスデザイナーが担っていたのですよね。
そこから、必要な役割について解像度を上げていき、適した専門家を配置できるようにしていきました。

当然、それぞれの役割に引っ込んで自分の仕事だけしていれば良いということにはなりません
また、役割を分けることで、そこには必ずコミュニケーション上のロスが伴います

BIL 2.0 の方向性を考える過程で気付いたのは、求められるのはチーム、特に多様な専門家が動的に交わる「アジャイルなチーム」なのだということでしたね。

菊地様:
何でもできる人が一人いて、どうにかしていくということじゃないんですよね。
一人で片付けているうちは、新しい問いも見い出せませんし

リコー菊地様
BIL TOKYO にて。株式会社リコー 菊地様