伴走者は、きついことも多い現場での緩衝材のような存在。
スクラムに対する反発はあったのでしょうか。
それは、なかったんじゃないでしょうか。最初の段階では、「また報告する会議が増えるの!?」という声もありましたが、1回開催すると、みんなまったく違うということがわかりましたので、このDXプロジェクトの中では反発はないと思います。
この機会に、私たちの取り組みが、みなさんにどう受けとめてもらっているのかについて、ぜひ聞いてみたいと思います。良いことでも課題感でも。フィードバックをいただけますか。
内部の人にも相談できないことを相談できているというのはあります。プロジェクトを進めていると、プロジェクトそのものだけではなく、組織運営上の悩ましい課題が様々発生します。
課題によっては、その後の計画にも影響があるだろうから早くお知らせしなくてはという思いもありますが、それ以前に、私自身が誰かに話を聞いてもらって落ち着きたいという気持ちがありました(笑) 事実をどう受けとめて、次にどうしていくのかという話は市谷さんにしかできませんでした。
他のメンバーも、反発や要望というよりはむしろレッドジャーニーの存在に癒されているのではないかと思います。きついことも多い現場では緩衝材のような存在です。
そういえば、最初は、完成形に向けて「もっとこうしたらいい」「スクラムも始めた方がいい」というようなことを早く言ってもらって、早くゴールを見えるようにしてほしいと思っていたことがありました。
でも、一足飛びにそこへは行かなかったじゃないですか。まずはその前に考える時間を作ろうということを言われましたよね。
そのときの自分たちのやり方が駄目だということは分かっていたので、具体的に正解を言ってくれないということは、自分たちに「そんな力はない」と思われているのかなと勘ぐったりした時期もありました。新しいやり方を始められるような状況ではなかったということが当時は見えていなかったのですよね。
仮説検証やアジャイル開発が確信をもって組織に受け入れられるにはどうしたらいいのか。
今後に向けて、レッドジャーニーに期待するのはどんなことでしょうか。いい結果を出していけるように、お互いに期待することを話し合えたらと思います。
一般的に、企業ではまだアジャイルという開発手法が受け入れられにくいと感じています。いわゆるウォーターフォールじゃない進め方が受け入れられにくい風土は、まだまだ残っています。すごくいいやり方だとわかってきたから、受け入れられないからと、やり方が戻っていってしまうのはもったいないと思います。
これだけ世の中がスピーディーになっていくと、当初立てた仮説が本当に正しいとは限りませんし、変わっていくことも多いでしょうから、これからは仮説検証やアジャイル開発という手法が一番ウェイトを占めていくと思います。
アジャイル開発がうまくいくためには、組織としてこの取り組みに確信を持ってほしいのですが、受け入れる組織風土がないと、一生懸命やっている現場のメンバーが報われないのではないかとすごく心配です。
アジャイル開発が受け入れられるために、経営層へどうアプローチしていけばいいのでしょうか。ある本のなかでは、とにかく役員と毎日話をしたというエピソードが紹介されていましたが、やはりそこまでする必要があるのでしょうか。
現場と経営との間で認識や方向性が一致していない、あるいは一致したとしても時とともにズレていってしまうということは、本当によくあることです。これはDXプロジェクトの取り組みにおける大きな課題だと私も感じています。
一定のサイクルでDXプロジェクト全体を対象とした、上層部との振り返り、向き直りを行うようにしていきましょう。スクラムのスプリントと同じ考え方です。
そうですね、ここは、今後の一番のテーマになりそうです。
最後に、私の方からもこのDXプロジェクトから感じたことを。皆さんとご一緒する中で、あらためて、メンバーの方一人一人の個性や感じ方、考え方をよく見て、それを大事にしながら進めていきたいと思っています。
見えているようで見ていない、そんな臨み方では、組織のこれまでのあり方ややり方を変えていくような取りくみは出来ないだろうと考えています。変革を進めていくのは、そこに居る人達自身。ですから、その変わり方と速度は、一様に決められることではありません。
私たちも当事者の一員に加えていただき、これからもともに乗り越えていきたいと思います。
というところで、お時間が来てしまいました。今日はとても濃く深い内容でお話させていただき、本当にありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。