適応について考える
「適応」していれば、スプリントレトロスペクティブは不要?
中村:
続いて、「適応」ついて考えてみたいと思います。
その前に、「頻繁に会話して、即適応や即カイゼンしていれば、スプリントレトロスペクティブは必要ないのでは?」というご意見があるようなのですが、新井さんはどう思いますか?
新井:
スクラムガイドの冒頭にも、”瞬間に適応することが期待されている”とありますので、即適応するというのはとても理想的だし、とても良いことだと思います。
ただ、スプリントレトロスペクティブには、”ちょっと止まって考える”ということも含まれているので、例えば「即適応したことってどんなことがあったかな?」と棚卸的な場を持つことは必要だと考えます。
中村:
そうですね。私も、場は必要だと思います。1日では分からなかった差分が1週間では分かったり、日々のふりかえりはしていても、1週間たってふりかえってみると違う見え方をするものもある。さらに、1か月の単位で見てみるとまた気が付かなかったものが見えてくることもあります。
時間軸を変えたふりかえりで、「頻繁にやれたものはどうだったか?どれが効果的だったのか?」を知るための検査をしてみるのがおすすめです。
新井:
「1か月後にありたい姿ってどんなだったっけ?その姿に近づいているかな?」というのは日々のふりかえりでは見えないですよね。だから時間という概念を持って、並行して取り組んでいけるといいですよね。
Message from coaches
- 頻繁に会話や適応ができていたとしても、ふりかえりの場は必要。取り組んだ内容について、時間軸を意識したスプリントレトロスペクティブで検査してみよう。
- ”すぐに適応すること”は理想的な姿だが、”ちょっと止まって考える”ことで、気が付かなかったものが見えてくることもある。
「適応」に取り組むときのポイントとは?
中村:
忙しくて適応するための時間が取れないという”とはいえ”もよく耳にします。
このようなときは、内容にもよりますが、取り組みたい「適応」をタスクとして書いて、スプリントバックログ、プロダクトバックログに置いてみるといいと思います。もしそれが他のバックログアイテムと比べて、大事でなければ優先順位が下がりますしね。
ふりかえりで出たアイディアも、取り入れると後々の効果性とか効率性が上がりそうだと思ったらぜひやってほしいし、逆にやらなくていいと思ったものはやらなくていい。それがある意味スクラムチームの責任だと思うし、取り組む順番はプロダクトオーナーを中心に考えていけばいいと思います。
新井:
そうですね。プロダクトバックログの機能を作るとか、ユーザーストーリーを達成するだとか、目線がミクロになってしまっているかもしれないですね。
もう少し俯瞰して見るといいと思います。検査・適応するためにプロダクトゴール、スプリントゴールに近づいているか、自分たちのプロセスにおかしな手戻りが発生するものがないか、といったことをふりかえりやデイリー、スプリントで適応し、バックログに追加して、見ていきたいですよね。
中村:
やった方がよい適応や、やるべき適応の項目がどこにも残っていないということでは、透明性も下がってしまいますしね。
新井:
忘れないようにするためにも、タスクマネジメントに放り込んで管理していくといいですよね。
中村:
これはエクストリーム(極端、過激)だなと思ったやり方なのですが、ふりかえりで出たアイディアや適応することを、次のスプリントの先頭に置くということをやっていたチームがありました。これが終わらないとプロダクトのインクリメントが終われないという(笑)。
新井:
おもしろい。それはとてもエクストリームですね(笑)。真っ先にそれを倒そうということですね。
中村:
そうなんです。CICD※のバージョンアップを先にした方がよいということだったら、先にしよう!とか、ワーキングアグリーメントが古くなっていたら、アップデートを先にしようとか。
そしてもしそれをこのスプリントではやらない理由や、後にまわす理由があればちゃんと言おうと。「バックログアイテムが先だから」というのは何の理由にもならなくて、なぜ今見つけた適応を今やらないのかという説明をしようと取り組んでいました。
※CI/CD:Continuous Intergration(継続的インテグレーション)/Continuous Delivery(継続的デリバリー)の略称。ソフトウエアの変更を常に自動でテストし、頻繁に統合したり、本番環境に安全にリリースするためにプロセスを自動化しておく開発手法のこと。
新井:
いいですね! 適応は絶対に発生する。何かしらの適応がスプリントごとに生まれているということですもんね。そしてそれが1年間蓄積すれば、すごい量の適応が発生しているわけですもんね。
中村:
結果どうだったかという評価は別にして、そのチームの変わっていくスピード、いろんなことに取り組んで整備されていったり、実験されていくスピードは相当早かったので、見ていて気持ちよかったですし、上手いなぁと思ってみていました。
といったところで、お時間がきてしまいました。本日もご参加いただきありがとうございました。次回もどうぞお楽しみに!
Message from coaches
- 適応はタスクに書いて、スプリントバックログ、プロダクトバックログに置いてみるのがおすすめ。取り組むべき適応の項目をバックログに残すことで、透明性もあげよう。
- 状況を俯瞰して見てみることで、プロダクトゴール、スプリントゴールに近づいているか、自分たちのプロセスにおかしな手戻りが発生するものがないかをふりかえり、適応していこう。
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