人数が膨れ上がったときに、どう分割すれば良い?

新井:
スクラムガイドに書いてあるメンバー組成を基準に、より生産性が高まるようなグループ分けができるといいですね

バリューストリームやリードタイムといった観点から考えるのもいいでしょうし、チームの成長という観点から師弟制度のような関係性を意図してチームを作るのもいいと思います。

中村:
基本的には、お互いが過干渉にならない、機能横断的なチーム編成が前提です。チームを分けてもお互い依存せざるを得ない状態では、そもそも分割する理由がありません。

では、具体的にどうすればいいのか?

最初から正解は見つかりませんから、一旦分けてみてうまくいくかどうかを検査・実験してみたらいいんです。

1〜2週間すると、いろんなことが見えてくるはずです。チームに足りないものがあるなら、人が動くのか、必要なトレーニングを受けるのか。

そうした取り組みの中で徐々に分割点を見つけていけたらいいんじゃないでしょうか。

新井:
いろんな切り口があるので、切り方をずっと考えていても時間ばかり過ぎてしまいます。

実験的に分割してみて、レトロスペクティブでチームの活動がしやすかったかどうか話してみるといいですね

最初はうまくいかなかったとしても、それはそれでグッドインフォメーションなので、それをもとに適応と成長を繰り返していければいい。

中村:
あまり良くないと思うのは、外から来たマネージャーが独断で分けてしまうケースです。

新井:
自己管理型チームになる機会を阻害してしまいますね。

中村:
もちろんマネージャーにはキャリアや経験、立場上のアドバンテージがあるでしょうから、全体から見た視点でアドバイスされるのは良いと思うんですけど、できればチームに決めてほしいです。

新井:
スクラムマスターがチームに問いかけて、意思決定を促していけると理想でしょうか。

中村:
そうですね。マネージャーが決めてしまいそうになったら、スクラムマスターが声をかけて一旦待ってもらって、チームで決められる方向へもっていけたらいいですね。

スクラムやアジャイルの原則として、「自分たちが一番良いやり方を分かっているはず」という前提がありますから。

Message from coaches

  • いろんな切り口があり正解はない。切り方を考え続けるよりも一旦分けてみて、うまくいくかを検査・実験してみよう。
  • 検査・実験のポイントは、お互いが過干渉せずに済む、機能横断的なチーム編成。
  • チームの活動がしやすかったかどうか、レトロスペクティブで話し合いながら、適応と成長を繰り返そう。
  • 一番良いやり方を分かっているのは自分たち。スクラムマスターを中心に、最終的にはチームで意思決定しよう。
  • バリューストリームやリードタイム、チームの成長など様々な観点から、より生産性の上がるチーム編成をみんなで考えよう。

「自己管理型」って、自分たちで全部決めていいということ?

中村:
全部ということはないですね。プロダクトチームだとしたら、プロダクトの外側には事業という枠組みがあり、さらに会社、社会とつながっているわけですから、当然ながらそれらとの整合性が必要です。

そのプロダクトを作ることで、どんな事業、会社、社会にしていきたいのか?
そこから立ち戻ってどんなプロダクトにするかを考えていくことが必要です

もし事業の方針を変えたいのであれば、適切な手順を踏んだ上でプロダクトに反映させなければ一貫性が保てません。

新井:
どこまでをスクラムチーム側で管理できるのか、どこからエスカレーションしないといけないのか。

会社の規模や事業の大きさ、背景、文脈によって違ってきますから、チームとステークホルダーそれぞれの持ち分を一概には線引きできません。都度コミュニケーションをとりながら、しっかり対話をすることが大事です

中村:
採用に関する部分で、例えばチームが知らないうちに新しい人の採用が決まっていた、みたいな話はよく耳にします。

新しい人を採用するときに、チームがどこまでリジェクトできるのか、話しておかないとモヤモヤしてしまうかもしれません

「どういう人がほしい」 「「どんなスキルが足りていないか」はもちろんチームから提示して、面接も基本的には立ち会えるといいですよね。

チームとしての希望を出した上で、最終的に採用するかどうかはマネージャーや経営者が判断するという形が理想的です。

新井:
「こういう人がほしい」という希望だけ言って、あとは人事部門やエージェントにおまかせというのでは、うまくいかないですね。丸投げしたら丸投げで返ってきます

スクラムチームと人事部門が一緒になって、採用の条件やスカウティングメールを考える。メールのやり取りにも関わったり、カジュアルな面談や、採用前に一緒にコードを書いてみるみたいなこともやった上で、チームとしての意見を言う。

そういうところまで関わっていけるチームが理想ですし、時間をかけて採用することでチームにとってもメリットが大きいと思います。

中村:
私が関わったチームでは、募集のためのサイトに載せる文言も人事部と一緒になってモブワークをしながら書いていました。すごく良かったですよ。

新井:
そういう雰囲気や一体感って、採用される側も何となく感じますよね。

Message from coaches

  • 「自己管理型」とは、全部を自分たちで決めていいということではない。チームの外側にある事業、会社、社会の枠組みとの整合性が必要。
  • チームとステークホルダーそれぞれの「持ち分」は一概には線引きできない。都度コミュニケーションをとりながら、対話をして確認していこう。
  • 特に、新しい人を採用するときにチームがどこまでリジェクトできるのかをクリアにしておこう。
  • 人事部門やエージェントと、採用までの時間と取り組みをともにしよう。希望を伝えるだけではなく、採用の条件やスカウティングメール、カジュアル面談等にも積極的に関わろう。

後編はこちら

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