「やりたいことがあるのに、日常業務が忙しすぎて手が付けられない」──多くの方が仕事の現場で直面する悩みの一つではないでしょうか。若者の離職率が高い水準で推移する中、キャリアアップや仕事の満足度向上を求めて離職するケースが増加しています※。人材を確保し、定着させるためには、労働条件や環境の整備だけでなく、スキルやモチベーションの向上につながる学習機会の提供が必要です。
千葉県では2024年度、職員(希望者)を対象としたアジャイル研修が実施されました。講師を務めたのはレッドジャーニー代表の市谷です。研修の前後に感じたことや受講後の変化、今後の展望について、担当の冨田様にお話をうかがいました。

※参照:若年者雇用対策の現状等について|厚生労働省

話し手

冨田 聖也 様
千葉県総務部人事課 職員能力開発センター

(経歴)
平成26年採用 東葛飾地域振興事務所
平成29年 水道局(現:企業局)管理部総務企画課
令和2年 健康福祉部障害福祉事業課
令和5年 総務省自治大学校研修(総務部人事課付)
令和6年 総務部人事課

聞き手

市谷 聡啓
株式会社レッドジャーニー 代表

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※部署、肩書などは2024(令和6)年12月当時の情報です。

目次

職員が安定して働けるように、ウェルビーイングの観点からアプローチする

主に、千葉県職員を対象とした研修の企画・提案・運営業務を担当しています。外部に包括委託する場合は、委託先との連絡調整業務も行います。

多様な人や考え方に触れ、様々な見識を得て、能力を養っていこうというのが大きな軸の一つです。千葉県ではどういう人材を育成していくのか、方針をまさに今作っている最中です。

── 地域課題として、どのようなことに課題感をお持ちですか?

県というのは自治体として大きな枠組みですから、いろんな課題を抱えています。国の動向や国際情勢などにも左右されます。

今は、特に若手の離職や休職という人的資源の問題が大きな課題となっています。ウェルビーイングの観点から、職員の定着・確保に向けて、人事部門を中心に様々な取り組みを行っています。

── 県職員の業務は、内容が非常に多岐にわたっていて、業務量も多いですよね。

おっしゃる通りです。専門性がどんどん高くなり、多様な業務への対応が求められます。

乗り越えようにも一人当たりの業務量が多いという問題があり、若い職員は悩みを抱えることも多いと思います。

県の職員は「スペシャリスト」というよりはどちらかと言うと「ゼネラリスト」としてのあり方が求められます。

環境の変化に迅速に適応し、自分が抱えている仕事の進め方を柔軟に考え最適化する能力を身につけてほしいという狙いがありました。

── 研修の内容について、どのような期待をお持ちでしたか?

受講者を募集してみると、技術職、事務職など多種多様な業務に携わる職員が集まりました。

事前アンケートからは「忙しくてやりたくてもできないことが多い」という潜在的な課題が読み取れました。

「やりたいけどできないこと」をいかに実現させるか、考えるきっかけにつながってくれたらという思いがありました。

(冨田様)

仕事に対する考え方が広がり、新しい発想やモチベーションにつながった

── 実施してみてどんなことを感じられましたか?

今回のように新しい考え方を学ぶ研修はこれまであまりしてこなかったのですが、関心を持っている職員が大勢いるということが分かりました

アジャイルの概念に触れたことがあるという職員は、ほとんどいなかったのではないかと思いますが、忙しい業務の合間を縫って時間を作ってでも、新しい考え方や自分を変えるということに意識を向ける、アンテナが高い職員がいるということが分かったのが一つ目の発見です。

また、講義後の演習では、自分の悩みを具現化・表面化させてアジャイルと絡めていこうという意欲が見えました。

研修前には認識できていなかったものも含めて、各々の悩みが会話を通してどんどん表面化してきたのではないかと思いますが、アジャイルの概念とつながったことで、すぐには難しくても実践につなげていこうとしている様子が初日の時点でもうかがえました

新しい概念ということもあり、若干手探りでアジャイルを実践する人が多い中、自分の業務のカイゼンや効率化といった結果に結びついている職員も複数見られました

職員の仕事に対する考え方が広がり、新しい発想やモチベーションにつながったことは非常にプラスに感じています

── 熱意のある人が見つかったこと、そういう方たちが自分で考えて実践し成果を感じていることは素晴らしいですね。

正直なところ、難しかったという声もありました。やはり新しい考え方ですから、直ちに実践できるかは分からないという声もありましたが、「やってみようと思います」「活かせる部分を見つけてやっていこう」という声が聞かれました。

最終的に修了したのは22名ですが、彼らにとってすごく刺激になる研修だったことは間違いないと思います