変化し続ける社会やビジネスの現場では、直面する課題が複雑化し、変化のスピードも加速し続けています。「金融を越える新たな価値」の提供を目指すみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(以下、みずほRT)。仮説検証を学ぶことでチームもプロジェクトも大きく変化したという、(ビジネス企画部)大滝様、(同・調査役)佐々木様のお二人にお話をうかがいました。
(聞き手:レッドジャーニー市谷)

越境からはじまった仮説検証の学び。

はじめに、お二人が取り組まれているプロジェクトの概要について教えていただけますか。

大滝さん:私は、出向先(当社グループ会社と、ベンチャーキャピタルなど新規事業創出のために立ち上げた合弁会社。以下、ラボ)にてアジャイル開発に取り組んでいます。
PoC(Proof of Concept=概念実証)を行うためのプロトタイプアプリケーションを4人のチームで作っています。

佐々木さん:私は、ビジネス企画部での新規事業創出をミッションとした活動と、ラボの仕事を兼務しています。ラボで生まれたアイデアを、当社がビジネス、システムの両面で支援するという関係性です。

そのなかで、お二人の果たされている役割はどのようなものでしょうか。

大滝さん:スクラムで開発を進めていますので、半分は開発者、もう半分はプロダクトオーナー(PO)の補佐をしています。具体的には、プロダクトバックログの優先順位付けを支援したり、開発チームと実際のPOである企画チームの橋渡しをしたりといった役割です。

佐々木さん:私は、ラボの中で事業開発をしながら、当社グループ会社と当社の活動を繋ぐ役割です。

普段はどの程度、仮説検証に取り組まれているのですか。

大滝さん:最近ようやく意識しはじめたという感じです。去年(2020年)までは仮説検証を繰り返していくという感覚はなく、稟議書を作成するためにインタビューやアンケートを実施するというレベルでした。

佐々木さん:インタビューを実施しても、結果に対する評価基準が定まらないまま企画書を作成することが多く、プロセスとして実施したこと自体が稟議を通すための材料のようになっていました。

そのせいか、プロジェクトを本格的に進める段階になってチームに加わると、「本当にこのまま進めていいのか?」と疑問に感じることもよくありました。しかし、そこで立ち止まることなく、そのまま進んでしまうこともありました。

そのような進め方に限界を感じたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。

佐々木さん:仮説検証に取り組んでいく必要性は以前から感じていました。そのためには、企画の早い段階からアプローチしていかなければなりません。そのためのケイパビリティを得るために、この1-2年で、必要な知識と具体的な方法を学ぶための取り組みを始めました。

大滝さんはアジャイルチームにいらっしゃるので、よりプロジェクトが進んだ段階から活動に参加することが多いと思います。つまり、よりモノ作りの観点から関与していくかと思いますが、バックログを見て「本当にこれでいいのか?」という疑問を持ったり、議論になったりすることはあるのでしょうか。

大滝さん:ありますね。本来はバックログがきちんと整理できてからスプリントを始めたいところですが、実際はスプリントを進めながらバックログの詳細を整えることが多いです。ですから、我々開発チームのメンバーも、企画チームのメンバーと一緒に、アンケートの調査設計やインタビューのシナリオ作成に取り組む機会が増えてきています。

そういった経験が企画チームのメンバーには乏しいこともあり、我々が実際に手を動かしてやり方を示すことも多いです。そのため、仮説検証は意識的に勉強しています。

PO(企画チーム)の支援という役どころですね。アジャイルチームでは、そういった仮説検証の支援をする役割が明確に定義されておらず、アジャイル開発のみに意識を向けるとエアポケットになりやすいので、課題になることが多いところです。
大滝さんがPO支援を始められたのは、どのようなきっかけからでしょうか。

大滝さん:POが非常に多忙なため時間的な制約が大きいことに加えて、会社間(開発側のみずほRTと企画側のグループ会社)の制約もあり、POとの間に距離を感じていました。開発チームとは顔を合わせる機会も少なく、気軽に相談もしづらいので、最初は妥協案のつもりで「PO補佐」という役割を置いたのです。まずはコミュニケーションの時間を週1回まとめてとるところから始めました。

最初は妥協案として置いたものがそのまま続いているということは、重要な役割を果たしているということなのでしょうか。

大滝さん:そうですね。その後の案件に入ってからもPO補佐という役割を継続しています。やはりPOがなかなか時間をとれないことは多く、開発チームがバックログの不明点を確認したくてもできないため、開発が停滞することがしばしばありました。都度発生する不明点をPO補佐としてカバーすることで、POに直接確認できなくても開発メンバーの仕事がなんとか少しでも進むようにしています。

アンケートの調査設計をするようになったのも、POまかせでは進みづらいという実感から、開発チームがより企画に入り込んでいこうと考えた経緯があります。

そういう背景のもとで開発チームでも仮説検証について学ぶ必要性を感じられたわけですね。