スプリントゴール、達成できなそうと言い出せない
中村:
開発者として、何としてでもやるんだという心意気は大事だと思いますが、できないことだってありますよね。
そういうときプロダクトオーナーに対してそれを表明できないとしたら、両者の関係性に何か見直すべきポイントがあると考えられます。
新井:
チャレンジ精神は大事ですが、無理なものは無理ですから、それは発言できる方がいいですね。
自己発信できる状況を作っておけると、メンタル的にもいいんじゃないでしょうか。
中村:
無理そうなのが分かっているのに、何も言わずただ頑張るというのは誠実じゃないですね。
シグナルがあれば事前に察知してサポートできますが、何もなければ助けようがありません。
「やばい」 「できない」 「助けて」という声があがるチームは、安心できます。
参加者コメント:
「勇気」が足りていないですかね。
新井:
コメントありがとうございます。そうですね。自己発信するにも勇気がいりますよね。
「スクラムの5つの価値基準」は「確約・勇気・尊敬・公開・集中」ですが、そこにも繋がっていきますね。
参加者コメント:
エスカレーションしても何もしてくれないと、だんだん口が重くなるんですよね。
中村:
そうなんですよね。
新井:
一つのアイディアとして、「とにかく愚痴を言う会」を設けるというものがあります。
「愚痴」という言葉にはネガティブなイメージがありますから、そうではない場を設けます。
1 on 1 でもチーム会でも、座談会、勉強会…形は何でもいいのですが、「愚痴を言っても構わない」というルールのもとで問いかけをすると、いろんな声が出てくるという話を聞いたことがあります。
中村:
「愚痴を言うことでネガティブと思われたら嫌だな」と感じるのは、心理的安全性を持てていない状態です。
口に出してみると、意外と他の人が解決の糸口を持っていたりしますからね。
新井:
ビジネス側と開発者側で請負体制のような関係性になっていたり、プロダクトオーナーと対等に会話できない関係性だったりもあるのかな。
中村:
プロダクトオーナーと開発者たちとの間に上下関係があると、「〜させていただいてよろしいでしょうか」というような言葉遣いになっていたりして、アジャイルコーチとしては気になることがありますね。
新井:
そういう日頃の言い回しも影響しますよね。
中村:
すごく心理的に影響を及ぼすと思います。
新井:
我々のように外部の人間が聞くとすごく気になるんですけど、中にいる人たちは気づかなかったりしますね。
チームビルディングでもキックオフでも、クオーターごとのふりかえりでもいいので、まずはその状況が良くないということを確認できるといいですね。
中村:
スクラムの文脈では、それぞれが専門家として責任を持ってやっていくので、上下関係はないんですよね。
プロダクトオーナーと開発者たちの関係性が一方通行になっていたり、異なる意見を言うことに対するコストが高かったりする様子は、アジャイルコーチとしてチームと関わっているとアンテナに引っかかってきます。
引っかかったら、率直に問いかけてみると気づいてもらえることもあります。
新井:
相手への尊敬があるからこそ、フラットな会話ができます。そのことをお互いが認識できるといいですね。
Message from coaches
- チャレンジ精神ややり抜く心意気は大事だけど、無理そうだと分かった時点で表明する誠実さも大事。
- 「できない」と言い出すには勇気が要ることも。チームの心理的安全性を高めるための工夫が必要。
- プロダクトオーナーと開発者たちは対等な関係。お互いを尊敬し合い、フラットなコミュニケーションが取れる関係性を目指そう。
マネージャーやプロダクトオーナー、スクラムマスターが、スプリントバックログの作成をリードしがち
新井:
これはよくあると思います。よく分かります。
中村:
デジタルツールの普及も影響している気がします。
コロナ前は主にリアルでホワイトボードや壁に向かって付箋を貼ったり動かしたりしていたと思うんですよ。
デジタルツールを使うようになって、スクラムマスターやマネージャーが一人でやっちゃうケースが増えた。
どこまで一人でやるのかの線引きが難しくて、気づくとやりすぎてしまうという面もあるのではないでしょうか。
新井:
たしかに、リアルでコミュニケーションしてきた「信頼貯金」があれば、リモートでもうまくいっているチームはありますからね。
中村:
みんなで「わちゃわちゃ」するっていう経験があるといいんですけどね。
新井:
そうそう。リモートからスタートしていると難しいですよね。
中村:
みんなで付箋を貼りながら「わちゃわちゃ」した経験がないと、デジタルでも感覚がつかみづらいのかもしれませんね。誰かが操作し始めたら、誰も手を出さなくなっちゃう。
参加者コメント:
共同編集ツールなのに本当のリアルタイムの更新には向かなかったりもしますよね。
中村:
コメントありがとうございます。たしかにそうですね。そういうときは、ツールを変えてみるのもいいですね。
新井:
リアルのときも、付箋の内容がかぶっちゃうようなことは多々あったんですよね。
中村:
そうそう。別にそれでいいんですよね。「ごめんごめん」 「ありがとう」って言えば済む話なので。
新井:
無駄になってもいいから、とりあえず手を動かすことで貢献をしていきましょう。
※参照:見える化:落書きするようにみんなで同時編集すればいいのに 新井剛
「Red Journey Advent Calendar 2023」より
中村:
何もしないでいるよりはずっといいです。無駄を恐れずにいきましょう。
参加者コメント:
あえて、リード役を輪番制にしたらどうだろう。
中村:
いいアイディアですね。輪番制にするとリードする人の気持ちがわかるから、自分がリードする立場じゃないときも自然とフォローし合えるのがいいですよね。
新井:
いいですね、輪番制。
中村:
今日もありがとうございました。
新井:
ありがとうございました。
Message from coaches
- ホワイトボードがデジタルツールになったことで、周りの動きが見えやすくなった分「わちゃわちゃ」感が減った側面も。デジタルでももっとみんなで「わちゃわちゃ」していこう。
- 付箋の内容や貼るタイミングがかぶっても問題ない。何もしないでいるよりは、無駄を恐れずにどんどん手を動かそう。
- ファシリテーターを輪番制にするのもいいアイディア。場に積極的に参加し貢献しよう。