Monthly Red Journeyは、毎月発刊のトピックレターです。
これまでのレッドジャーニーの発信の中から、特定のテーマに基づいてトピックを集め、紹介します。
今回のテーマは「社内勉強会のすすめ」です。

組織を変えていこうと考え、いざ取り組みを始めてみると、その難しさ、途方もなさに立ちすくんでしまうことがあるかもしれません。
そんな中、より良い現場・職場をつくるために、1人からでも始められることがあります。
はじめは1人か2人から、徐々に理解を得たい上司や同僚、協力を得たい他部署の人たちも巻き込んで、「社内勉強会」を開いてみませんか?

社内勉強会が必要な理由

組織にアジャイルを導入し定着させていく際、必要なのは「学習─適応」のサイクルです。

必ずうまくいく「ベストプラクティス」が存在せず、自社の環境に合わせてカスタマイズを加えながら、適応し続けなくてはならないからです。

また、アジャイルには手段(Do Agile)目的(Be Agile)の2つの側面があり、それが理解と実践を難しくしています。

いざ実践しようと思っても、実際の業務の中で実験的な取り組みをするのは難しいのではないでしょうか。
そこで、有効な手立てとなるのが、アジャイルの経験や知見を共有するための「社内勉強会」です。

こちらのスライドでは、社内勉強会を立ち上げ、周りの人たちを巻き込みながら、運営を自動化していく作戦として14個のヒントが紹介されています。

▼スライド全文はこちら

社内勉強会をゼロ負荷で実施するために/Insurtechラボ | ドクセル (docswell.com

社内勉強会で何をするか

社内勉強会を立ち上げたあと、何をするか悩んだら、社外の専門家、有識者、経験者を招いて話してもらうのも一つの方法です。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループで3回にわたり開催された社内勉強会では、レッドジャーニー代表の市谷がアジャイル開発についてお話させていただきました。

後日行われた「ふりかえり座談会」で見えてきたのは、勉強会をきっかけとして様々な立場の人たちが新しいことに気づいたり、励まされたり、モチベーションに繋がったりしたというポジティブな影響です。

今回、「自分自身もチームや周りの人にも、いろいろ知ってもらったり、気づきを得られたらいいな」と思い勉強会を開催しました。そういった意味では、話を聞いてやる気になった人もいたし、参加したプロダクトオーナーもだいぶ刺激や勉強になったと思います。参加した後に飲みに行って「ああだよね、こうだよね」と熱い思いを発言する人もいたので、やってみて良かったと思います。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様 アジャイル開発 社内勉強会 ふりかえり座談会 – Red Journey

すごく刺激を受けました。私は市谷さんの『アジャイル教本』を読んでいたのですが、話を聞いてると自分の中でモヤモヤしていることを言語化してくれているような感じがして。
すごく刺激を受けたので、またいろいろと本を読み始めたり、CSPO(認定スクラムプロダクトオーナー)のセミナーや資格を取る講習会も受けに行く予定です。あとは「社内の他部署でも似たような悩みを持っている人がいたんだ」ということがすごく発見になりました

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様 アジャイル開発 社内勉強会 ふりかえり座談会 – Red Journey


勉強会のあと組織的にもだいぶ変わってきていて、「数か月前は全然わからなかったけど、いまもう1回話を聞いたら、きっともうちょっとわかることが増えてるんだろうね」と話す人もいました。スクラムマスターの講習を受けにいった本部長も「トレーニングは知識が足りなくて全部は消化できなかったけど、もう1回数か月後に受けに行きたい」と話してくれました

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様 アジャイル開発 社内勉強会 ふりかえり座談会 – Red Journey

個々人の一つ一つの変化が相乗効果をもたらし合いながら積み重なっていくことで、大きく組織が変わる原動力となるのではないでしょうか。

社内勉強会がもたらす成果

社内勉強会を継続し成果につなげられている事例として、NTTグループの社員向け勉強会である『NTT Agile Meetup』をご紹介します。
今後の開発やスキルアップに役立てるために、社内外から有識者が集まってナレッジシェアをしています。

その『NTT Agile Meetup』第6回にて、市谷が基調講演をつとめました。
「組織を芯からアジャイルにする〜アジャイル開発は世界を変える夢を見るか〜」と題し、「そもそもDXとは?」「組織に何が不足しているのか?」「アジャイルを組織に適用するには?」などについてお話しました。

NGRA 鈴木未央様による基調講演のグラレコ
※NGRAとは…「NTT Graphic Recording Association」。NTTグループ内でグラフィックレコーディングやグラフィックファシリテーションに興味を持つ仲間の集まり

基調講演のご依頼をくださったのは、NTTコムウェア株式会社 NTT IT戦略事業本部DigitalDesign&DevelopmentCenter DevOps担当 の伊山様です。

講演を依頼された理由として、市谷の書籍や過去の講演から得たことを、グループ内で共有したいという思いがあったそうです。

NTTグループでは、アジャイル開発の普及を目的としたイベントを年に1~2回開催しています。外部からも有識者をお招きして、先進的な知見や取り組み事例を学ぶ機会となっています。

私自身が市谷さんの書籍『カイゼン・ジャーニー』を読んだり、他のイベントでの講演を聴いたりした時、市谷さんは「顧客やチームにとって正しいことをするために自分の今の役割に固執せず、周囲を巻き込んでいくことの必要性を伝えながら、勇気を与えてくれる方だ」と感じました。是非とも、その考えや取り組みをイベント参加者にシェアして今後の活動に活かしてもらいたいと考え、講演を依頼させていただきました。

第6回 NTT Agile Meetup 基調講演に、代表の市谷が登壇しました。 – Red Journey

勉強会の成果として、まずは現状の課題についてより具体的な共通認識を持つことができた点、また、その解決策について自分たちなりの道筋を描く契機となった点をあげられています。

市谷さんがおしゃった「荒ぶるDX四天王へのあるある」や「最適化の呪縛」に対して、「確かに」「なるほど」といった感想を聴講者から多く聞きました。たくさんの人が感じているもやもやとした現状の問題を、参加者共通のイメージとして認識できたことに成果を感じています

そのうえで、組織がアジャイルになっていくために、市谷さんが提示してくださった「自分たちの居る場所を変える」「回転を止めない」などの手がかりをそれぞれが受け止めて、これからどうすべきか、どうしたいかを考える貴重なきっかけを頂けたと思っています。

第6回 NTT Agile Meetup 基調講演に、代表の市谷が登壇しました。 – Red Journey

アジャイルを広めようとする時、最も大変なことの一つが人々の意識を変えることです。
「初めの一歩」を踏み出す前の、現状や目的、方法への認識・理解を合わせる段階が必要です。
もし個々の施策レベルでは相容れなくても、大きな課題意識へと遡ることで、一致できるところがきっとあるはずです。

社内で身近な人や関係者へ地道に働きかける努力は大切ですが、より効果的な方法が、社外の専門家、有識者、経験者から一緒に話を聞くことです。

豊富な経験をもとに語られるナレッジには、認識を揃えるために必要な大局的な視点や、検証が重ねられた概念・考え方、具体的な施策や失敗を含む事例などが含まれています。

また、時には話す内容以上に、誰が話すか(話す人の立ち位置)が大きな意味を持ちます。
いつものメンバー・いつもの場所・いつもの雰囲気の中で停滞感を感じたら、社外の有識者や専門家、経験者から、一緒に話を聞くことをおすすめします。

レッドジャーニーでは、カジュアルな雰囲気の中で専門家と個別に話せる無料相談会を開催しています。
チームでもご参加いただけますので、一つのきっかけづくりとしてご活用ください。

「社内アジャイルコミュニティ」を立ち上げよう

社内勉強会では、参加者の人数を集めること以上に、共感し賛同できる仲間を得ることが大きな意味を持ちます。
そうした仲間の集まりを「コミュニティ」と言います。

組織の中に、アジャイルについてのコミュニティがあることで、社内の機運を高め、仲間を得ることができます
変革の下地となる「社内アジャイルコミュニティ」を有志で立ち上げましょう。公式・非公式は問いません。

社内アジャイルコミュニティ」の狙いや立ち上げ方については、こちらのイベントを参考にしてください。

アジャイルからはじめる組織変革

エナジャイルは、アジャイルから始める組織改革のスタイルです。
大組織のデジタル変革に数多く携わっているレッドジャーニーが、変革のための足場づくりから伴走支援します。
詳しくは、特設ページをご覧ください。

実践の手引き『組織を芯からアジャイルにする』
~アジャイルの回転を、あなたから始めよう。~

ソフトウェア開発におけるアジャイル、
その可能性の中心を「組織づくり」「組織変革」に適用するための実践の手引きとして、
市谷による著作『組織を芯からアジャイルにする』をおすすめします。ぜひご活用ください。

書籍『組織を芯からアジャイルにする ~アジャイルの回転を、あなたから始めよう~』

『カイゼン・ジャーニー』
~たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで~

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで | 市谷 聡啓, 新井 剛

レッドジャーニーの市谷と新井による著書『カイゼン・ジャーニー』では、ストーリー形式で分かりやすくアジャイルについて解説しています。
物語は主人公が社内勉強会を開くところから展開していきます。
登場人物たちに共感を寄せながら読み進めるうちに、スクラム開発やアジャイルの考え方について理解が深まっていくことでしょう。

これまで多くの方にお読みいただき、「現実味のあるストーリー仕立てで感情移入しやすく、スクラム開発を理解するのに最良の入門書」、「すべてのソフトウエア開発者、そして開発者以外の方にとっても読む価値のある一冊」、「今まさに現場を変えるための一歩を踏み出そうとしている人の背中を押してくれる本」などの感想をいただいています(2023年2月、第7刷の重版が決定)。

レッドジャーニーへのお問い合わせ

多くの組織にとって、組織活動にアジャイルを適用していくという挑戦はまだこれからと言えます。
組織アジャイル、アジャイル開発の適用や課題、お困りごとについて、お問い合わせはこちらからお寄せください。
ともに考えていきましょう。